理事長宅（？）でテスト勉強！｜リアクション

理事長宅（？）でテスト勉強！

〇廃墟の勉強会～客間～

「やあ、みんなよく来てくれたね。どうぞそのまま上がってくれたまえ」
　ニコニコと顔をだした理事長は、ののこを見つけてさらにその笑みを輝かせました。
「よろしくお願いします」
　頭を下げた英二は、ののこの様子を伺いましたが、特に視線を理事長に向けるでもなくスルーしているようです。
　露骨に嫌がってはいないようで、英二は内心胸を撫でおろしました。
（理事長には今のところ接触は控えて大人しくしていて貰った方が良いかな）
「こちらが居間でそちらが客間だよ。適当に二部屋に分かれてもらえるかな」
　幸い理事長も心得ているようで、ののこに話しかけたりすることなく皆に公平に接しようとしている様子でした。

　通された客間は、ソファに埃も見えず思ったより綺麗でした。
　空気がよどんでいないのは、隙間風……いえ、風通しがいいせいでしょう。
　靴のまま上がっているので足が汚れる心配もありません。
　見回すと、部屋の隅にはウォーターサーバーと紙コップが用意してありました。
「冷たいお茶も用意してあるから言ってくれたまえ」
　にこやかに理事長が言います。
（とりあえず掃除や片づけはしなくてもいいかな……）
　訪問先でいきなり掃除を始めるのも勇気がいるので、彰尋はひとまずほっとしたのでした。

(本当に人の住めそうな場所とは思えないけど……）
　遠海は珍しく困惑していましたが、来たからには仕方がないので、勉強を開始することにしました。
（とりあえず５教科を、期末で出てきそうな部分を中心に勉強しよう）
　この前のテストもそんなに悪い成績をとったわけではないのですが、もう少しいい点を取っておきたいなとは思うのでした。

「どの教科にしようかな？」
　英二はあおいについて行ったののこと共に席に着きました。
（野々さんは中間試験で数学が駄目だったみたいだし）
「数学の復習はどうかな」
（……ウォルター先生にアドバイスしてもらいながら一緒に取組むのが良いかも）
「うう……やらなきゃダメだよね」
　しぶしぶののこは教科書を取りだします。
「集中力があるうちに数学に取り組むのはいいな。有意義な時間にしよう」
　あたりが不潔ではないことを確認して、修はあおいの隣に座り問題集を広げました。
「わからないところはあるかい？」
「……それじゃ、この問題なんだけど」
「ああ、ここはね……」　　　
　あおいに質問された修は笑顔で、丁寧に優しく教えていきます。
「ありがとう、さすが修君」
「役に立ててよかった」

「修くん、私も聞いていい？」
　その様子を見ていたののこが声を上げました。
「もちろん。どこがわからない？」
「どこがというか、全部なんだけどー」
「ああ、まずはね……」　
　修はののこに分かり易く教えようと努めますが。
「なんかあおいちゃんの時と熱量が違うね……」
　ののこに突っ込まれてしまいました。
「そうかな？　よく一緒に勉強してるから気負いが無いのかも」
　照れ隠しに修は笑いながら弁解します。
「いつもの呼吸ってことだね」
「そうだね」
　あおいが同意してくれたことが嬉しくて、修はご機嫌で次の問題集を出します。
「なんか楽しそう……」
　再び突っ込みを入れるののこでした。

　

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