７月の前奏曲｜リアクション

７月の前奏曲

☆家庭科同好会

　放課後、２年生の水上桜は久しぶりに家庭科同好会へ足を向けました。
　その大人しげな外見とは裏腹に、桜は水泳部と家庭科同好会を掛け持ちし、その上で生徒会会計まで務めるという結構アクティヴな女の子です。
（今日は水泳部は休み、生徒会の方も顔見せ程度の打ち合わせで終わったからちょうどいいわ）

　家庭科教室に行くと、まだ活動開始前でした。
　エプロンをつけている同級生が、桜を見て驚いた笑顔になりました。
「久しぶり！　今日は出られるの？」
「うん。今日は何をするの？」
「今日は涼しげなフルーツゼリーケーキを作るのよ。ナイスタイミングだね」
「夏らしくていいわね」
　部室においてあるエプロンと三角巾を身に着け手を洗って、準備は万全です。
「使うフルーツは、イチゴやマスカット、みかんにさくらんぼにキウイフルーツね」
　レシピを見て、大体の流れを頭に入れているうちに、皆が揃いました。

　ケーキといってもスポンジを使うものではなく、ベースはあくまでゼリーです。
「まずは粉ゼラチンを大さじ5の水にふり入れ、ふやかす……」
　細かい作業が得意な桜は、計量も手際がよく迷いがありません。
「それから鍋にサイダー200mlを入れ火にかけるのね」
「残りのサイダーは後から入れるよ」
「わかったわ」
　沸騰するのを待って火を止め、さっきふやかしたゼラチンを加えます。
「あとはよく混ぜて溶かすのね」
　アクセサリー作りは一人ですが、調理は手分けしたり交代しながら少しずつ作業を進めるのが楽しいところです。
「残りのサイダー500mlを優しく加え、優しく混ぜる」
「炭酸が抜けない様に優しく混ぜるのがポイントなの」
　その間に、他の部員がフルーツを冷蔵庫から出して洗います。
「フルーツを好みの大きさにカットして……あ、キウイフルーツは後からね。ゼラチンが固まりにくくなるから」
「そうなんだ」
　同級生の指摘に感心しながら、桜はイチゴやマスカットを水で濡らした型に入れていきます。
「最後に上からゼリー液を優しく流し入れる。後は冷蔵庫で冷やすのね」
　
　しっかり冷やした後、固まったのを確かめてキウイを乗せました。
「見た目、まるでレジンで固めたアクセみたい……」
　桜の感想に、同級生が笑いました。
「アクセ作りが趣味の桜らしいわね。これは食べられるアクセサリーね」
「これっていかにも夏向けだよね」
　見た目は最高に綺麗なゼリー、果たして肝心の味は……？
「いただきます」
　皿にとりわけて席に着き食べてみると。
「美味しい！　トロピカルな味ね」
「うん、とてもおいしい」
　炭酸がきいて美味しいフルーツゼリーに、みんな満足そうな笑顔になりました。

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