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たとえばあなたが、
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【陰陽】
『逃げろ。とにかく』
やや黄ばんだ白い紙片には、そう走り書きがされていた。
逃げねばならないらしい。
三宅 葉月
は後ろを振り返る。確かにあれは、葉月を追いかけてくるようだ。歩幅は小さく、鈍い足取りでじわりじわりと歩み寄ってくる。背格好や体格は男性のそれを思わせるが、どこか輪郭がぼやけてはっきりと確認はできない。顔は焦げ付いたように黒ずんでいて、まるで判別がつかなかった。
あれに捕まれば葉月がどうなるか、想像はつかないが、当然好ましいことにはならないだろう。
葉月はたどたどしく駆け出した。あまり運動が得意なほうではなく、駆けたとてそう大した距離も稼げまいが、ぎこちなくもとにかく足を動かした。
奇怪な追手の遅々とした歩みが、逆に恐ろしく思えた。きっとあれは、息を切らして休むことなどないのだろう。
『失くしたものを探せ。取り戻せ』
紙片はいくつも配されているようだ。夜闇の中へ浮かび上がるようなそれをたどることにする。
深い森だった。ほうほうと鳥の鳴く声、獣の遠吠えが樹々を抜けて吹く風に乗り届いた。闇や獣にとて恐怖を抱かずにいられないが、着実に距離を詰めてくる背後の追手よりはいくらかましに思えた。
背の低い下草を踏みしめながらしばし森を進むと、ひどく唐突に家が現れた。暗がりにあってやけにまぶしい白い壁の洋館だが、造りはどこか歪で奇妙に思えた。
背にゆっくりとした足音が聞こえ、葉月は急ぎ館へ走り込む。玄関の錠をかけ、エントランスに面した階段を上がり、二階へ。長い廊下の扉は軒並み閉じられていて、最奥の一つだけがこれみよがしに開いていた。
足音。もうこんな近くに。葉月は部屋に飛びこみ後ろ手に扉を閉めた。
部屋はアトリエのようだった。画材が散らばり、イーゼルにかけられたキャンバスがおびただしく並んでいる。眼力強く描かれた巧みな人物画、子どもが本能おもむくまま筆を叩きつけたような稚拙な落書き。おどろおどろしい奇怪な怪物の絵。神々しくあたたかみある楽園の風景画。いずれの絵にも見覚えはなかったが、それでいてどこか懐かしくも思えた。なぜだろう、葉月はこれらの絵を知っているように思えてならない。
『全てを選べはしない。一つ選んで持っていけ』
背後で扉が開く。追手の異貌を一瞬ながら、初めて間近に見た。ぼやけた輪郭の中、顔に走る暗い亀裂の奥には煌々として赤いかがやきが流動しており、それらは明滅する文字の羅列で形作られているように見えたが、その一つ一つの意味を読み取るには至らなかった。
とっさに葉月がつかんだものは並んだ絵の中の一つではなく、床にぶちまけられていたスケッチ用の鉛筆の一本だった。握り締め、奥の扉の向こうへ駆け込む。
進む先に光はおぼろげだが、深い洞窟のような場所であるのが、ごつごつとした岩の連なりで見て取れた。足元にとび出た岩塊につまづきながらも、迫る足音を聞き早足で歩き出す。
分かれ道を感覚で左、右、左と進む。洞窟の壁に反響する複数の足音は逃げ場なく行き来して、葉月を焦燥させる。
少し開けた空間に出ると、天井を支える太い岩の柱の脇に書店があった。扉を開くと、吊るされた鈴の音が涼やかに鳴り葉月を出迎える。古めかしい外観にたがわない初老の店主も、足腰立たないのかカウンターの向こうに座りっぱなしで、その視線は白黒テレビにかじりつくように吸いつけられている。
『心配いらない。代金は私が持とう。好きな物を持っていけ』
紙片を一瞥し、うず高くそびえる書棚を眺める。なかなか興味深いラインナップだが、再び鈴が鳴った。足音が近づき、葉月は適当な一冊を棚から抜き出して、カウンターを乗り越え店の奥へ向かう。すり抜け様にも、店主はこちらを見もしなかった。
書店裏は店主の住まいなのだろう。勝手口の扉を開けて外に飛び出すと、灯台の頂上へ出た。眼下には大しけの海が白波をうねらせ、濃霧の向こうへ走る照射灯の輝きに、葉月は目を細める。
葉月はその時になって、書店から持ち出した本を眺めてみた。本ではなく、白紙のスケッチブックだった。鉛筆もあるし、何か描くことができるだろう。
描く? 葉月は首を傾げる。自分は、絵を描くのが趣味だったのだろうか? あるいは生業としていたのだろうか?
『飛びこめ。君にはそれが必要だ』
紙片が目についた。何枚かの黄ばんだ紙片が灯台の手すりにかろうじて張り付けられ、強い風に今にも吹き飛ばされんと揺れていた。
『手は施したが、危険な状態に変わりはない』
『だが、信じてほしい』
『君が服毒した理由を、君の口から聞きたい。話がしたい、それだけだ』
足音が聞こえる。
『君の絶望を知りたい。それを晴らす術を、一緒に模索しよう。しかし、それには』
風にもまれて紙片ははがれ、宙へ舞い上がる。渦を巻き、やがて曇天に紛れて消えた。
鉛筆を握り締め、スケッチブックを固く抱く。それらが自身の礎なのだと感ずる。近づく異貌と対峙するため、それがただ一つ己にとって確実なものであるのだと。
足音が聞こえる。ゆっくりと、着実に、それは近づく。輪郭を揺らめかせながら、足を止めることもなく、常に。
葉月はそれを真っすぐに見据えたままに後退り、
「……まだ、描き足りないから」
自らの意思で、渦巻く波間へ跳んだ。
落下のさなかに、葉月は灯台が照らすまぶしく虹色の輝きを見た。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。
『たとえばあなたが、』のリアクションをお届けいたします。
ホラーはやっぱり、いいものですね。楽しく執筆されていただきました。
今回は皆さま、ほぼキーワードをご提示いただいてのおまかせコースとなりました。
どれもインスピレーションの湧く素敵なワードでして、自由にのびのびと書かせていただくことができました。
結果的に今回はいずれもIFの世界のお話となりましたけれど、皆さまの心にはなにかしら残るものがありましたら、幸いでございます~。
それでは、今回もご参加いただきまして、まことにありがとうございました。
次の機会にもまたお目にかかれますことを、心よりお待ちしております。
お疲れさまでした~!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
ホラー
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年11月30日
参加申し込みの期限
2021年12月07日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年12月07日 11時00分
参加キャラクター一覧
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