堕ちるは付喪神、荒ぶる精霊を討滅せよ｜リアクション

堕ちるは付喪神、荒ぶる精霊を討滅せよ

　月の明るい夜。
　八神の発案で集まった寝子島の民たちは九夜山の頂上でささやかな宴を開いていた。
　天へと昇って行ったであろうヤガンへ捧ぐとして、飲み物や食べ物を持ち寄ったその宴で皆は戦いの疲れを癒す。
「これ美味いのですよ！　はむはむ、むふーっ香ばしいハーブの香りがなんともなのです！」
「それは良かった、まだ他にもあるからどんどん楽しむといいよ」
　八神に頭を撫でられながら、水色髪の少女ちーあはハーブチキンを頬張っている。
「ふむ、この酒……中々に良い味わいじゃ。ほれ、お主ももっと飲むといい」
「待って！？　私飲めないからね！？　あうっ柔らかいものが顔にって、待ってそれぇ、首がぁ締まってる締まってるぅー」
　酒を飲みながら上気した顔でチビナミは真白に絡んでいた。真白も彼女に絡まれて悪い気はしないようで楽しそうに笑っている。
　適当にチキンやサンドイッチを摘まみながら、想花は月を眺める。
「ヤガンは、ちゃんと救われたのかな……」
　物憂げな想花を見て常闇が一口、ジュースを口に運んでからそれに応える。
「最後に彼は言っていました。ありがとう、と。それならきっと救われたんだと思います」
「そっか、そうだよね。うん、きっとそうだ」
　食べる皆から少し離れた位置でナディスと轟は腹ごなしにと二人で組み手を行っている。
　その動きはかなり俊敏で、おおよそ常人では目で捉えることすら難しいだろう。
「いいか、打った後の防御も意識するんだ。ガードを忘れちゃ耐えられるものも耐えられないからな！」
「はいっ！　参考になります、ししょーっ！」
　そんな二人を見て木に背中を預ける御剣は苦笑する。
「戦いの後だっていうのに、あの二人は元気だな。ほんと凄いよ」
「カタナは元気じゃないんですかぁ？　んふふ、ツクヨは元気ですよぉ、いい戦いでしたからねぇアレはぁ」
　そんな御剣の隣でグラスに注いだワインを飲むのはツクヨだった。ほろ酔いでいい気分らしい。
「俺は元気だよ、それにしても今回はサポートされっぱなしだったな……ってそれはいつもか」
「いいんですよぉ、ツクヨが好きでやってることですしぃ。カタナは遠慮なくツクヨを頼っていいんですからねぇ？」
　ニコニコ笑うツクヨの笑顔につられて御剣も笑顔になる。
「ああ、そうすることにする。いつもありがとうな、ツクヨ」

　戦いで救える命と救えない命がある。
　必ずしも救える命ばかりではない。それが命のやり取りという物だ。
　だが救えなかったとしてもその想いを受け止めて、進まねばならない。彼方へと逝った物の為にも止まることは許されないのだ。

　そして宴は大いに盛り上がり、月の綺麗な夜は更けていった。

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