【ツクモワタリ】。現世に“在る”ことに疲れた付喪神が霊界へと渡り、永遠に霊界の住人となる為に催されることがある祭りのことだ。
付喪神は物から発生したとはいえ“精霊”であることに違いはなく、迎えるのならばそれ相応の祭りが催される場合がある。必ず行われるというわけではなく、気まぐれに行われその規模や参加者も時々で変わる。その自由さもまた霊界特有なのかもしれない。
だがそれを快く思わないものも少なからずあやかしの中にはいる。それらはそのタイミングを待ち望んでいるのだ、自分たちのようになればいいと。
「またツクモワタリを行うらしいな。なぜただの物であった者たちに敬意を払わねばならん。長く生きるあやかしの方が、敬意を持たれていい存在だろう」
「その通り。ツクモワタリなんぞ邪魔してしまえばいい、我らで催してやろうぞ……
【ツクオワタリ】、をなァ」
暗い闇の中、複数のあやかしが蠢く。それらは忘れられし者。もう人に認知もされていないであろう、いつかの、誰かの忘れた存在達。
彼らにしてみれば物に宿った人の想いで精霊となり、付喪神として迎えられる彼らが妬ましいのだろう。
卑しく笑うあやかしたちの心は羨望と妬み、恨みで酷く歪んでいた。
綺麗な満月が夜空に浮かぶ夜。
長く使われたやかんから生じた付喪神【ヤガン】は提灯をぶら下げるあやかしの先導でツクモワタリの場へと向かっていた。
しかし、事前に聞いていた場所からはどんどん離れていく。町から離れ既に九夜山のふもと辺りだ。
「なあ、本当にこっちで合っているのか? 聞いていた場所とはだいぶ違うようだが……」
「ひひっ、問題ありませんって旦那ぁ。最近はツクオワタリとかいう偽の祭りがありましてねぇ。それに誘おうとするあやかしを避ける為に、場所を変えたりするんでさぁ」
なるほどと、納得して歩くヤガンと先導するあやかしは森の中の少し開けた場所に出る。そこには黒い不可思議な紋様の描かれた陣があった。
「ではその陣へ入ってくださいませ。そうすれば霊界への道が開けます故……いひひっ」
怪しむこともなく、ヤガンは陣へと入る。すると妖しい紫色のオーラが立ち上り、禍々しい黒い煙が辺りに立ち込めた。
少し吸っただけでヤガンは苦しくなり、その場にしゃがみ込む。せき込みながら先導していたあやかしを見ると彼は卑しく笑っていた。
「げほっげほっ、なんた、この煙は……体に力が、まるで、入らない。これは……穢れた気ではないのか!?」
「ご明察……瘴気ですよぉ旦那ぁ。へへ、精霊とてこれだけの瘴気では逃れられますまい。ひひっ、そのまま堕ちてくだせぇ、我らのように……いひひっ」
「くそうっ放せっ、俺は、お前らのようにはぁ、ならな、ぐ、ぐわぁぁああああああーーッ!」
陣から這い出るように現れた無数の黒い手がヤガンを掴み、地面の底へと引きずり込んでいく。
必死に抵抗するヤガンのもがきも虚しく、彼は数秒もしない内に地面へと引きずり込まれてしまった。
「いーっひっひっひ、堕ちた、堕ちた、はは、これであいつも歪む、我らと同じように! ひゃははははは!」
高笑いするあやかしが消えるのを見た
えみな ハルくんは一目散に走りだす。
「ついに見てしまったのにゃ……あれがツクオワタリっ! 早く誰かに知らせないとなのにゃ!」
必死に走るハルくんであったが、こういう急ぎの時であるほど誰とも会わない。仕方がない、今は丑三つ時、人の往来は非常に少ないのだ。
そんな時、目の前に人影が二つ。二人共背丈は小さいが中々の巨乳だった。
「ふむ、真白や。お主がすすめたこのじゃりじゃりくんじゃがな、実にいい食感じゃ。ざくざくとしていて歯触りが良いのう」
「でしょー? 色んな味もあって楽しいんだよね、次はどれにしようかなって思ったりするんだよ、ってあれ、君は……?」
白 真白とチビナミは目の前で息を切らしている女性を見る。その表情は切羽詰まっておりただならぬ雰囲気を感じさせた。
「た、大変なのにゃっ! 信じてくれるかはわからにゃいけれど、ツクオワタリを見たのにゃあッ!」
ハルくんから事情を聞いた真白は腕を組んで話す。
「そういうことなら助けに行かないと! 今から行けば堕ちる、だっけ? その前に間に合うかもしれないし!」
「……やめておけ、その付喪神は瘴気の中に落ちたのじゃろう? それならばもう既に堕ちているはず。討滅することはできても、救うことはできんじゃろう」
真白にそうチビナミは言う。黄泉に連なる者という特性上、チビナミは瘴気に詳しい。そして歪んだ者にも。彼女が救えないというのなら、実質そうなのだろう。
「でも放っておけないよ! だってその人は付喪神、誰かの想いを受けてるんだよ、それが堕ちたままなんて……!」
「ふむ、それならば救えぬ場合は討滅する覚悟があるのじゃな? 堕ちし者の所に向かうということは……そういうことじゃぞ」
ハルくんとチビナミが見守る中、真白は強い瞳でいう。彼女の心に迷いはない。
「うん、大丈夫。救えないその時は……きちんと終わらせる」
「よく言ったのじゃ。そこまで言うならばわしも手を貸さねばなるまいのう。ハルとやら、場所に案内せい。ちーあ達も呼ぶでな、こちらの戦力は多いぞ」
「わかったのにゃっ! こっちなのにゃっ!」
走っていくハルくんを追いかけ、チビナミと真白は夜の闇の中を走っていくのであった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
今回は瘴気の中に落ちてしまった堕ちた付喪神【ヤガン】の討滅作戦です。
堕ちた付喪神は在り方が歪んでおり、救える可能性がゼロではありませんが限りなく低いです。
討滅して苦しみから解放する、という覚悟を持って参加して頂ければと思います。
※今回は霊界☆ミーティング <霊界の謎を追え!>の噂をもとにしたシナリオです。
◆場所
霊界の深淵忘れられし【瘴気の渦巻く地】
:捨てられ、忘れられたあやかしの巣窟。
常に瘴気が漂っており、徐々に体力が奪われる。
場所としてはただの広い洞窟でしかない。
最奥にヤガンがおり、そのヤガンを守るようにあやかしが複数体展開している。
ヤガンに到達するにはあやかしを突破しなければならない。
◆予想ルート
ヤガンを討滅する 危険度:かなり危ない 同行者:チビナミ、ナディス
:最奥にいるヤガンを討滅します。
ヤガンは徐々に瘴気を吸い込み強化されていく特性を持ちます。
最奥に到達するのが遅れる程、討滅に時間が掛かれば掛かるほどに強くなるでしょう。
ヤガンを守る歪みのあやかしを倒す 危険度:危ない 同行者:イザナ、ちーあ、ツクヨ
:ヤガンを守るように展開している歪みのあやかしを倒します。
あやかしたちは足止めを行う攻撃を多数持っていますので、それらを
かいくぐり、ヤガンの元に到達するか、あやかしを討伐し押し通るかそれは皆さま次第です。
あやかしの数は不明ですが、どうやら複数いるようです。
◆ちーあの支給品
※ひとつだけ選んで持っていくことができます。
私のシナリオで配布されたアイテムを持ち込む場合、そちらは持ち込む数に制限はありません。
その場合は支給品も一つ選んで同時に使用することができます。
・夜泣きの刀
:美しい青い鉱石を用いて鍛造された刀。軽くて切れ味が鋭い。
しかし、切る度に悲しい感情が刀に積み重なり、柄にあるゲージが満タンになるとと刀身から水を流す。
ゲージを全消費することで水属性の強力な攻撃を放つことができるが、使用者も使用後は数分間涙が止まらなくなってしまう。
・びりびりロッド
:使用するな、危険という張り紙と共に封印されていたちーあ作の武器。チビナミが持ってきた模様。
強力な雷の玉を複数放ったり、雷のビームを放つことができるが使う度に使用者に電流が流れるという恐ろしい仕様。過去の作戦で使われた物のようだが……少し改良を目指し強化されているとか。
・あつあつ饅頭
:開けると常に一つ饅頭があつあつで入っている箱。食べると受けた傷を回復してくれる。
蓋を閉め、3分待つことで中身が復活する不思議仕様。
どうやらちーあの知り合いの試作品らしく、3回に1回だけわさび饅頭になるという欠点あり。
◆予測される敵情報
堕ちた付喪神【ヤガン】
:ヤガンの姿は鉄で構成された巨人のような姿をしています。サイズは4メートルほどです。
ヤガンは高圧熱湯噴射による射撃攻撃の他、地脈を操り地面から高温の水蒸気を噴き出させるなど
広範囲攻撃を多用します。近距離では太い腕や足を生かした近接攻撃を仕掛けてきます。
その腕力や脚力は鉄すらも容易に砕くほどですので注意が必要です。
物理的な防御力は高いですが、魔法的な防御力はありません。
激昂した状態で、人に対し捨てられた物たちの強い恨みの念を植え付けられています。
歪んだあやかし
:体が歪に歪んだあやかしたちです。彼らは人に対して強い恨みを抱いており、命を奪おうとします。
それぞれが見にくく歪んだ剣や槍、盾で武装していますが防具の類は身に着けていません。
群れで襲って吐きますが、それぞれに連携行動などはなく、各々が好き勝手に行動しているようです。
◆登場人物
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
最近、チビナミに様々な方法で絡まれる為、ちょっと煩わしく思うが内心楽しく思っている。
選んでもらった私服が特にお気に入りのようで、色んな人に見せている。
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所があったが、
寝子島の民との触れ合いにより、徐々にそういう部分は鳴りを潜めつつある。
瘴気に詳しく、なぜかそれについてあまり語りたがらない。
イザナ
:ちーあの仲間で黒髪でツインテールの少女。
雷を扱う戦士であり中距離、近距離選ばず戦えるオールラウンダー。
なお料理は壊滅的な腕であり、どんな素材を使ってもこの世の物と思えない料理を作り出す。
最近お酒にハマり、色々な銘柄を試し中。
選んでもらった私服が気に入ったようでよく着て出かけている模様。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。なお胸はFカップ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
なお味の濃い料理が好みで、味噌や醤油を好む傾向。魚よりは肉派。
最近は食べ歩きも趣味になりつつある。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお胸は最近はEカップになったとか。
あやかしの見た目が苦手で、震える拳を根性で抑え込んでいる。