【星幽塔】第一階層　白夜祭り｜リアクション

【星幽塔】第一階層　白夜祭り

☆相棒と共に

　万条幸次は、もふもふの毛並みのライオン、ブロゥことブロケイドと共に星幽塔にいた。
　ブロゥは幸次が星の力で実体化させた騎士の乗り物で、外見は立派な成獣だが、中身はまだまだ遊びたい盛りだ。
「ブロゥ、食べたいものはある？」
　そう訊ねるとブロゥは鼻をひくつかせ、屋台の前で立ち止まった。
「何かの生き物の丸焼き……かな？」
　トカゲっぽい形の生き物の丸焼きは、猫ほどの大きさがあった。
「ドラゴンモドキだよ、レアが美味いよ～」
　店員はそう勧めてくれたが、見たこともない生き物の丸焼きはいささか幸次にはハードルが高く感じられた。
「……一人分ください」　
　幸次は買った肉をブロゥの前に差し出す。
「じゃあこれ食べて待ってて。俺は他の食べ物を探してくるから」
　ブロゥは主である幸次には普通の猫と同じようにじゃれたり甘噛みしたりするが、他の人を襲ったりはしないし、つないでおかなくても大人しく待つことができる。
　肉にかぶりつくブロゥに手を振り、幸次は自分用の食べ物を探しに出かけた。

「おまたせー……あれ？」
　しばらく後戻ってきた幸次は途方に暮れた。
　ブロゥの姿が見えない。
「おかえり」
　いや、返事は返ってきたのだが。
　その言葉を発したのは、戦士っぽい服装の男の子だった。
「どしたのコージ。ぼく、ブロゥだよ？」
「えっ？」
　幸次は驚きに目を見開いて、目の前の男の子を見つめる。
　ライオンの鬣みたいな髪型、頭についた見覚えある装甲、そしてぐいぐい擦り寄ってくる感じ……
（間違いない。そういえば以前飼い猫の花遊も人間の姿になったっけ）
　状況を飲み込んだ幸次は言った。
「さっきの丸焼きのせいかな……？　とりあえず、あっちのベンチに行こうか」
　
（しばらくしたら元に戻るだろう、たぶん）
　そう思いつつ星の噴水の前にあるベンチへ移動し、幸次は買ってきた焼きそばっぽいものを広げた。
「おいしそう、ぼくにもちょうだい」
　鼻をひくひくさせて言うブロゥ。
「さっき何かの丸焼き全部食べたのに、まだ食べるのか……」
　苦笑する幸次に、ブロゥは当然のような顔をして言う。
「ぼく、まだ弱いからいっぱい食べて強くならなきゃ！」
　幸次は焼きそばを分けてやり、一緒に食べ始めた。
「ブロゥが弱いと思ったことはないよ。今までだって何度も助けてもらったし、ブロゥがいてくれるから冒険が楽しいんだ」
「でも、まだ足りない。もっと強くなりたい」
　一瞬焼きそばが足りないのかと思ったが、そういうわけではなさそうなのでちょっとほっとする。
「２人でもっと経験して一緒に強くなればいいんだよ。な、相棒？」
　頭を撫でてやると、ブロゥは気持ちよさそうな表情になった。

「ごちそうさま」
　食べ終わったので篝火を見に行くことにした。
「すごい火だなあ」
　大きな炎はブロゥの鬣を思い起こさせた。
　すると、急にブロゥに腕を引っ張られた。
「一緒に踊ろう」
「えっ？！」
　ダンスする人達の輪に入れられ、幸次は目を白黒させる。
「俺踊り方とか全然わからないんだけど………」
「大丈夫」
　平然とよくわからない踊りを踊りだすブロゥ。
（考えてみれば、ライオンも踊り方はわからないよね）
　周囲の人たちも思い思いに体を動かしているようだ。
「もう、2人で適当に踊って楽しもうか！」
　そう思うと気が軽くなって、幸次も音楽に乗り踊りだした。

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