【星幽塔】第一階層　白夜祭り｜リアクション

【星幽塔】第一階層　白夜祭り

☆思わぬ出会い

　白いローブ姿の鴻上彰尋は、∽羽包みの箒『白い貴婦人（ホワイトレディ）』を手に街中を歩いていた。
　星幽塔にある箒と魔法具のお店『sweep∽sleep』でオーダーメイドした箒だ。
「白夜？　それでこんなに明るいのか」
　出店で食べ物をを買いつつ、店員に祭りのことを聞いてみた。
「ありがとう。白夜を体験するのは初めてだから、お祭りも含めて楽しみたいよ」
　空からも街の様子が見えたらと思い、箒にまたがった彰尋は騎士の光の力も使う。
　ふわりとした浮遊感と共に、彰尋は空へと浮かび上がった。
　白い貴婦人は穂に風を含み小さく微笑んでいるようだ。
（星の噴水ショーも真上から見れるかな？）
　そう思って下を見下ろすと。
「あれ？」
　見覚えのある髪型の少女を見つけて、目を凝らした。
　まさか、と思いつつも、見間違えるはずもない。
「あおいさん！」
　寝子島ならともかく、星幽塔の中で会えるなんて。
　驚きつつ確かめずにはいられず、彰尋はあっけにとられた表情の少女に向かって高度を下げていく。
「えっ？　彰尋くん？」
「こんにちは……こんばんはかな、あおいさん」
　驚かせない程度の距離を取って、ふわりと彰尋は七夜あおいのそばに降り立った。

「彰尋くんが魔法使いみたいに箒に乗ってやってくるから、びっくりしちゃった」
　あおいの言葉に彰尋は笑う。
「驚かせちゃったかな。でも俺も驚いた。一人で来たのかな？」
「うん。不安だったけど、彰尋くんに会えてよかった」
　あおいの笑顔を見ながら、彰尋は言葉を紡ぎだした。
「ここは魔物がいる世界だから、初めてきたなら一人じゃ危ないから……一緒にこのお祭りを見て回らない？」
「夢の中で見たような……初めてなのかな？　うん、彰尋くんと一緒なら心強いよ」
　そう頷くあおいに、彰尋は微笑みを向ける。
「危ない所もあるけれど、この世界はとても素敵なところもいっぱいあるから。案内するよ」
「うん」

　獣人や羽を持つ人々の姿に目を丸くするあおいを微笑ましく眺めながら、彰尋は屋台を案内した。
「美味しい！」
　ドラゴンハンバーグを食べたあおいが弾んだ声を上げた。
「良かった。こっちのお店は飲み物があるよ」
　二人はピンク色の星のエールを味わう。
「こんな味初めて。美味しいね」

「次は魔法の道具屋さんを案内しよう。この箒を買った店なんだ」
　彰尋はあおいを、路地の一角にある箒と魔法具のお店へ案内する。
「これが魔法の道具なの？　いろいろあるね」　
　あおいは不思議そうに道具たちを見つめた。
「ここの商品には“意思”が宿っているんだ」
「本当に？」
　目を丸くしたあおいは、商品が動き出すのではないかとじっと見つめるのだった。

　その後薬屋を回った後、彰尋はあおいに箒を見せた。
「よかったら、箒に一緒に乗って空からの景色を眺めないか」
「乗ってみたい！　でも二人で乗れるの？」
　目を輝かせながら、ちょっと心配そうな顔をするあおい。
「二人までなら飛べるでしょう、レディ？」
　彰尋が箒に尋ねると、頷くように穂先が縦に動いた。
「よろしくお願いします」
　あおいはレディに向かい微笑んで頭を下げるのだった。

「しっかりつかまっていて。行くよ」
「わあ……！」
　小さくなる地面に、彰尋の後ろに乗ったあおいが歓声を上げる。
（この世界ならではの楽しい思い出を作って欲しい）
　彰尋は背中にあおいのぬくもりを感じながら、そう願った。
　

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