【星幽塔】第一階層　白夜祭り｜リアクション

【星幽塔】第一階層　白夜祭り

☆異世界転生？

「えっ？　ここどこ？」
　寝子高１年の月原想花は、猫鳴館の自室で寝ていたはずだった。
　なのになぜか、見知らぬ街の中にいる。
　しかもどう見ても、建物や行きかう人の服装が現代的ではない。
「まるで……異世界？」
　気がつけば何故か自分の服装も、寝ていた時に着ていたＴシャツとジャージのズボンではなく、町娘風になっていた。
「……まさかぼく、異世界転生しちゃった？」
　最初の感想はそれだった。
「いやいや、そりゃ最近流行ってるけど……いくらなんでも……これ、ジョークだよね？　ぼくは車にひかれた覚えも暴漢に襲われた覚えもないよ？」
　確かに想花はファンタジー好きだし、異世界転生物とかも好んで読むし、転生物じゃないけどファンタジー小説を書いて小説投稿サイトに掲載しているけれど。
　でも周囲を見まわすと、羽を生やした者や獣の姿をした者たちが歩いている。
「特撮……じゃなさそうだなあ」　
　内心ビビりまくりではあるが、一方で好奇心がむくむくと頭をもたげてきたのを感じた。
　周囲の人々はみな笑顔で、楽しそうな音楽や歌声も聞こえてくる。
「今日はお祭りなのかな……？」
　キュルルル……
　そう思ったら途端にお腹の虫が鳴いた。
　思い切って屋台へ足を進める。
「いらっしゃい」
「よかった、言葉は通じるんだ……」
　屋台に並ぶ食べ物は見慣れないものだったが、美味しそうな匂いがした。
「えーと、これをください」
　一番なじみがありそうな、ハンバーガーのようなものを指さしてそう言ったところで、大変なことに気づいた。
「しまった、お金を持ってない！　ど、どうしよう？　お金もないのに食べたら牢屋に入れられちゃう！？」
　パニクる想花に、店員のおじさんは優しく言ってくれた。
「大丈夫だよ。今日は白夜祭りで一店につき一品無料なんだ」
「そうなの？　よかった……」
　冷汗をかいていた想花はようやく安堵した。

　
　寝子高２年、「フツウ嫌い」の水上桜は、桜花寮にいたはずだったが。
　周囲の様子を見て、またしても自分が星幽塔へ放り込まれたことを知った。
（またか、またフツウかっ！）
　……などと叫ぶことはない。叫んだら負けた気がして癪だから。
「なんか今日はお祭りっぽいわね」
　周囲の屋台を見回した桜は、気を取り直して店員に声をかけてみた。
「今日は何のお祭りなの？」
「ああ、白夜祭りだよ。あの大きな篝火を焚いている間は夜にはならないから、一晩中明るいままで騒げるってわけさ。お嬢さん、星のエールはどうだい？　無料だよ」
「ありがとう」
　無料なら遠慮なくもらっておこう、というわけで、桜はのんびりとお祭りを楽しむことにした。
　屋台で無料の食べ物や飲み物を手にし、適当にそれを食べながら街をうろついてみる。
「ん……？　白夜の露？」
「お嬢さん、ラッキーだよ。今移動するところだったんだ」
「白夜の露って、飲み物なの？」
「ああ、この晩しか飲めない星のお酒だ。これを飲めば、次の白夜祭りまで、幸運が続くと言われているよ」
「へえ……美味しいの？」
「飲んでみればわかるさ」
　そのまま成り行きで透明な液体が入ったグラスを受け取り、桜は「白夜の露」を飲んでみた。
「美味しい……」
　なんとなくほろ酔い気分で気分が良くなってきた。

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