【星幽塔】第一階層　白夜祭り｜リアクション

【星幽塔】第一階層　白夜祭り

☆星の噴水ショー

　ほしびとのティオレ・ユリウェイスが城下町に戻ってくると、街中が妙に騒がしいのに気づいた。
「野暮用があって町を離れていたが……そうか、今日は白夜祭りの日だった。すっかり忘れてたよ」
　そうと決まればまずは腹ごなしだ。
　屋台へ向かったティオレは焼肉をつまむ。
「姐さん、いい酒あるよ！」
　へそピアスをした色気のあるティオレに、店員が声をかける。
　だがティオレは手を振って断った。
「せっかくだけど私は下戸でね。飲んだら確実に悪酔いするから、やめとくよ」
　そう言ってベリージュースを手に取る。
　調達した食べ物飲み物を手に、ティオレは城下町を流れる水路へ向かう。
　光が打ちあがるような星の噴水ショーが始まった。

　桜も、光に惹かれて水路へ向かっていた。
　色とりどりの星の噴水が次々に上がる。
　桜はその美しさに目を見張った。
「すごいなあ……」
　輝く水が吹きあがっては、宙を縦横に動き回る。
　水が描き出す複雑な形や、飛び散る水しぶきなど、見ていて飽きない。
（これ……使えないかな？　時間ができたらやってみようと思っているアクセ作りのモチーフに……）
　そんなことを思いつつ、しばらく噴水を見物した。

「まあまあだね」
　ティオレはしばらく噴水を見ていたが、さすがに長時間見るようなものではないと歩き出した。
「あれ？　あの屋台は……」　
　それは白夜の雫の屋台だった。
「こいつは縁起がいいね」
　そんなティオレに屋台の主が声をかける。
「姐さん、ラッキーだね。一杯飲んでいきな」
「いや、私は……」　
　気が付けば、ティオレの手元のジュースは空になっていた。
「……まあ、いいか」
　成り行きで、白夜の雫を飲みほした。
「うん、美味い」
　下戸の彼女には一杯だけ飲んでも相当に効いた。
　そのうちに歩調が乱れ、あっちにブラブラこっちにブラブラな状態となる。

「大丈夫かな、あの人……」
　食べ物を食べつつその辺をほっつき歩いていた想花は、千鳥足のティオレの様子を見て心配になる。
「お嬢ちゃんも飲んでいきなよ。『白夜の露』はめったに飲めるもんじゃないよ」
　今度は店員に酒らしきグラスを差し出された。
「ぼく、未成年なんだけど……」
「星幽塔じゃ年は関係ないよ。後で飲みたくて後悔しても遅いよ」
　断り切れず、受け取っておそるおそる口をつける。
「あ、美味しい……」
　結局一杯飲みほしてしまった。
「なんだかいい気持ち……」
　酔っていい気分になった想花は、そのまま楽隊の曲に乗って踊りだす。
　普段なら恥ずかしくて真っ赤になっているところだが、いい気分でそんなことは気にならなかった。

　ブラブラと篝火の近くにやって来たティオレは。
「姐さん、ご機嫌だね。そこで踊らないか？」
　観客から声をかけられた。
「けど、この通り酒に酔っぱらっちまってるので話にならないよ……」
「いやいや、踊れるだろう？　あんたが舞台で踊ってるの見たことあるぜ」
　ティオレの表向きの仕事は踊り子だ。
　表向きとはいえ、好きな仕事である。
　結局ティオレは、一人で酔いながら歌ったり踊ったりでやたら楽しい一日を過ごしたのだった。

　星の噴水を見物し終えた桜は、篝火の近くにやってきてティオレの踊りを見ていた。
　向こうでは想花が踊っているのが見える。
　桜も白夜の露でほろ酔い気分なので、つい口をついて歌が出てしまう。
　手拍子に景気づけられ、白夜の祭りは最高潮となった。

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