ブルーベリー・パニック！｜リアクション

ブルーベリー・パニック！

「んっ……渚砂ぁ……」
　鼻に抜ける甘ったるい声を出すのは深雪だ。
　シャツははだけ、ベルトは外され、初夏の日差しの下、色づいた白い肌を晒して震えている。
　まぁようは半裸である。
「深雪、甘い……」
　うっとりと囁く渚砂。その肩がぽんっ、と叩かれる。
「とても言いにくいんだが、正気に戻った方がいい」
「え？…ふぐっ」
　振り返った渚砂の口にペットボトルをねじ込んで、市橋が苦笑する。
「半分ずつでも効くかなぁ？」
「え……な、に？」
　ぼんやりとした熱に包まれていた深雪がこてん、と首をかしげる。
「はい、次ね」
　きゅぽんっと渚砂からペットボトルを引き抜くと容赦なく美雪の口に押し込んで、残りを注ぎ込む。
「ふぁ、んっ」
　口元から白い液体をこぼしつつ、素直に嚥下する様子が妙に色っぽく見える。　
　まぁ、たぶんブルーベリーのせいだろう。
「え、あ、……＼( 'ω')／ウオオアーーーッ！？」
　一足先に我にかえった渚砂が悲鳴を上げて深雪から飛びのく。
「違うんだこれは誤解というかその…うわぁああ！！」
　市橋が乾いた笑みを浮かべて何度も頷いている。
　すねに同じ傷を持つもの同士だ。慰めあうにはうってつけだろう。

「な、なんだかあちこち凄い事になってるね……」
『こわい』
　ほのぼのとブルーベリー狩りを楽しんでいた戌井と小山内は、農園の片隅で唖然としていた。
「皆、ブルーベリーのせいみたいだけど……」
　異様なＥＲＯＳ空間に怯える小山内をかばいつつ、どうしたものか、と戌井が唇を噛む。
『わたし、へいき』
「うん、僕もブルーベリー、食べたんだけどへいき」
　どうやらこの二人は、あまりブルーベリーの効果が出ないようだ。
　どうしてかなぁ、と顔を見合わせる。
「おい」
「わっ」
「！？」
　声をかけた八神に二人があからさまに怯えた。
　戌井が小山内を背に庇うように前に出る。
「……ひどいな」
　苦笑した八神をじっと見つめる。
「八神さん……正気、なの？」
「あぁ、ほとんど口にしていないせいだろうな。戌井達は？」
　ブルーベリーを食べていない、という八神に幾分か安心して二人の警戒心が解ける。
「んー、僕たち、普通に食べてたんだけど……」
『へいき』
「……個人差……体質によるのか？　新井やシグレも効果が弱かったようだし……」
　八神がノートに何事か書き込む。
「とりあえず、白いブルーベリーを確保しておいた方がいいぞ」
　こてん、と小山内が首をかしげる。
「青いブルーベリーでえっちな気分になり、白いブルーベリーでその効果が消せるようだ。まぁ多少、副作用があるみたいだが」
「副作用？」
　こてん、と戌井が首をかしげる。
「泣き出したり、落ち込んだり……他にもあるかもしれんが、まぁ、暴走している奴らには調度良いぐらいだ」
　さらりと酷い事を言う。
「あ、でも……正気じゃないなら、確かに落ち込むもんね」
　まぁ問題ないか、と頷きあう。
「うん！　白いブルーべリー確保するよ」
『ありがとう』
「いや……暴走してそうな連中、見かけなかったか？」
　実は……、と苦笑しながら戌井が農園の出入り口を指差した。
「夏神さんが魂行さんに引っ張られて……川に行くって言ってるの、見たんだ」
「……それだな。猫又川か……」
　八神が確信する。
「無粋な事はしたくないが……暴走してのことであれば止めてやらないとな」
「僕たちも行きますっ！」
『いく！』
　いざ、猫又川へ！　

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