ブルーベリー・パニック！｜リアクション

ブルーベリー・パニック！

１、一狩行こうぜ！

　よく晴れた休日。
　中間試験後の疲れ目に、空の青さが眩しい。
（良い天気で良かったな）
　バス停で、小山内海は空を見上げる。
　ちょっと珍しいブルーベリー狩りのツアーがある、と寝子校生の間で噂になっていたベリー農園に、友人たちと一緒に行くのを楽しみにしていたのだ。が、待ち合わせの最寄のバス停に友人たちの姿は無い。
（皆遅いな……）
　連絡をしてみようか、と携帯電話を取り出すと、ぴろぴろ着信音が鳴り響いた。
（あ……メール……）
　カチカチ操作して内容を確認する。
（！…えぇ……残念）
　急遽来れなくなった、という連絡にしょんぼりしつつ、小山内は気にしないで、とメールを返す。
　残念だが仕方が無い。
　こうなったら、友人たちの分も楽しむのが吉だ。なんなら少し持ち帰ってお土産にしてもいい。
　携帯電話をポケットにしまい、気を取り直して農園への道を歩き出す。
（あれ？　もしかして……）
　見覚えのある後姿を見つけて、小山内が小走りに近寄る。
　その気配に気がついたのか、ふわふわした茶色の髪を揺らして戌井創が振り返った。
『こんにちは』
　小山内がスケッチブックのページをぱっと見せる。
「こんにちは、海ちゃん」
　にこっと笑って戌井が道の端に寄る。声の出せない小山内が喋るには、少し時間がかかる。気遣いに甘えて、小山内も道の脇へ寄ると、白紙のページを開いて、さらさらと喋りだす。
『べりーのうえん、いく？』
「うん、ブルーベリーが沢山食べられるって聞いて！」
『かのじょさんと？』
　小山内の言葉に、にこにこしていた戌井の顔が真っ赤になる。
「ち、ちがうよ～、いつも一緒ってわけじゃないし……そ、それは一緒にいるとき多いけど……」
　照れているのだが、のろけているのだか、よくわからない戌井の反応に、小山内が微笑む。
「友達とね、来ようって言ってたんだけど、皆行けなくなっちゃって……海ちゃんは？　一人なの？」
　こっくり頷いて、小山内がさらさらと喋る。
『いっしょにいっても、いい？』
「もちろん！　一緒に行こう」
　にっこり笑いあって、ゆっくりと歩き出す。
「ふふふー、すっごい豊作みたいでね、いっぱい食べられるように、僕色々持ってきたんだよー」
　肩を上げて、ぱんぱんに膨れたリュックサックを見せると、小山内の目が見開かれる。
　戌井がゆっくり歩いてくれるせいで喋りやすい。スケッチブックに声を書く。
『たくさん。なにもってきたの？』
「えへへー、スポンジケーキと生クリームも入ってるの！　これでケーキにも乗せられるし、皆で沢山食べられるよ！」
　素敵な思いつきに、小山内がふんわり微笑む。
『わたしも』
「海ちゃんも何か持ってきたの？」
　こくん、と頷くと、少し恥ずかしそうに微笑む。
『いちご、にてるとおもって、れんにゅう』
「あ、そっか。ブルーベリーっていちごの仲間だもんねー」
　太っ腹なのか大らかなのか、指定の範囲なら何でも持ち込んで良いという案内に、この二人以外にも色々なモノを持ち込んだ人間がいるようで……

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