文房具まつりがやってきた！｜リアクション

文房具まつりがやってきた！

「ただいまー」
「お帰りなさい、真優理さん」
　その日。青山絢と暮らすマンションに帰宅した水谷真優理は、パンプスを脱ぐより先に、絢にスマホの画面を見せた。
「なぁに？　ねこったーのＴＬじゃない。……文房具祭り？」
「そう！　ね、絢ちゃん、面白そうじゃない。行こっ？」
　画面には、文房具祭りに出店するメーカーの公式アカウントが名を連ねている。新作、先行販売、イベント限定などの文字が踊るそれを、絢は指でなぞった。
「ねーぇ、一緒に行こうよー」
　真優理は玄関の上がり口に座り、戸惑う絢に上目遣いで、瞳をウルウルさせて迫る。
「えっと……うん、分かった。行くよ」
「ほんと？　やったーっ！」
　圧倒された絢が誘いを受けると、真優理は飛び跳ねて喜んだ。
「真優理さん、もう夜だし、もうちょっと静かに……」
「うっれしっいなっ、うっれしっいなっ」
　パンプスを脱ぎ、スキップで部屋の中へ。舞うようにバッグをしまって、ぽいぽい服を脱ぐ。後はお風呂へ一直線、鼻歌交じりのシャワーである。

（３０歳にしてこの可愛さが似合うんだから、すごいというか、なんというか……）

　絢は真優理の服をたたむと、夕飯を冷蔵庫から出すことにした。

◆

　その頃、小山内海はスマホをスタンドに立てて、買い物リストを作っていた。

（あっ、この筆ペンいいな……クレヨンも）

　メモ帳にメーカーと商品の名前、値段を書き込んでゆく。
　日常的にスケッチブックを使う海にとって、文房具は欠かせないものだ。なので、文房具祭りの告知を見たときから楽しみにしていたのである。

（えーと次は、猫の穴！　ここの画材は使い勝手がいいし、絶対に見逃せないんだ。よーし、明日は奮発しちゃうぞー）

　お目当ての店を見つけ、リスト作りにいっそう熱が入る海だった。

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