追いかけっこ物語～妖怪・おおねこ編～｜リアクション

追いかけっこ物語～妖怪・おおねこ編～

　◆第四章「たくさん遊んで、帰ろう」

「よーんーかーいーめーー！！」
「ふにゃ～～ん！」

　瑞毅はまた別の日にも追いかけられる。手慣れたもので、その逃げ方はどんどんスタイリッシュになっている。
　その様子を見ていた恵御納夏朝。おおねこの可愛らしさにちょっと絆されたが、このままでは瑞毅が危ない！　と、どうしようか悩んだ。

　ふと夏朝の目についたのは、商店に並ぶ猫じゃらしの数々。おおねこの大きさは相当なものだが、もしかしたらどうにかなるかもしれないと２つ購入。猫じゃらしダブルソードを装備した。

「おおーい！　こっちだよー！」

　猫じゃらしダブルソードは瑞毅の目にも、おおねこの目にも映った。
　瑞毅は危ないぞ！　と注意をするが夏朝は引く気はない。むしろ、どんとこい！　と、ねこシールをぺたりと自分のほっぺに貼り付けた。
　重く軽く。ねこシールを付けた対象の重量を変化させるろっこんであり、夏朝はこれを自分に使って軽くしようと試みていた。

　……が、ここで夏朝は気づいてしまう。

（……いつもの癖でこうしちゃったけど、人が多いなら効果減衰する気がする！！）

　そう、ここはシーサイドタウンの大通り。
　一般人がたくさんいるせいか、ろっこんの発動がしづらい状況。夏朝の重量はほんの僅かにしか変わらなかったため、ほぼ普段どおりの重量のままになってしまった。

「わー！　わー！」

　このままでは自分も巻き込まれてしまう！　そう気づいた夏朝は、ひとまず猫じゃらしダブルソードを手に、他の人々を巻き込まない場所へと誘導することに。
　なお、瑞毅は夏朝に向けておおねこが帰り道をわかっていないことを伝えると、そのまま離脱。彼女にバトンタッチして、その場ですっ転んでしまった。

　長く走り回って、数十分。辿り着いた平原はそよ風が心地よく、疲れた身体を冷やしてくれる。
　呼吸を整えた夏朝はおおねこに向かっても自己紹介をしておいた。

「え、えみな・かーさ、です。……よろ、しく……おおねこさん……！」
「にゃぁ～～！」
「わぁー！？」

　挨拶されて、仲良くなった！　と嬉しくなったおおねこ。疲れ切った身体を癒やしてあげようと言わんばかりに夏朝に飛びついて、むにむにと前足で夏朝の顔を触っていた。

「わ、わ、おてても可愛い……！　えっと、にくきゅう触ってもいいかな……？」
「にゃ～～」

　ふにふにとした肉球を触る。あまりの気持ちよさに連続して触れている夏朝は、目をキラキラと輝かせていた。
　なかなか触ることがない猫の肉球は、それはもう、夢のような触り心地だったようで。

　更には夏朝はにゅ～るやまたたびといった、猫が大好きなものを渡してみた。
　おおねこは最初はなんだろう？　と首を傾げていたが、美味しいものだとわかるとペロペロと一心不乱ににゅ～るを舐めたり、またたびにぐねぐねとしていた。

　だが、夏朝は不意に思い出す。瑞毅が言っていた、帰り道がわかっていないということを。
　遊び続けて迷子になったか、それとも単に寝子島に迷い込んで帰り道がわからないのか。そこまではわからないが……帰り道を教えてあげなくては、きっとこのままなのだろうと考えてしまった。

「……おおねこ、さん。霊界……に、帰りたい、かな？」

　思い切って尋ねてみた夏朝に対し、おおねこは帰れるの！？　と嬉しそうな表情と声で鳴いた。
　帰り道がわからなくて困っていたのは本当だったようで、夏朝は駅まで一緒に歩こうか、と提案してあげた。

「じゃあ、こっちだよ」
「にゃ～ん！」

　なお、猫じゃらしダブルソードを噛ませたままで花緑青駅へと連れて行ったのだが、その光景はおおねこが見える人にとってはわけがわからない状況だったと、後に語られる……。

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