もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！｜リアクション

もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！

〇和菓子づくり体験

　鴻上彰尋は、チラシを見て和菓子づくり体験教室のことを知った。
　母と兄が働いているので家事関連はどれもこなし、特に家庭料理が得意な彰尋。
「弟たちのおやつに和菓子を作ることはあっても、おはぎとかで、練切り菓子は作ったことがなかったな」
　なんとなく、高級なイメージがあって遠い存在な気がしていた。
（せっかくだし、こういう機会に一度作ってみたい。その場で食べられるようなので抹茶と一緒にいただけたら嬉しいな）
　想像が膨らむと共に、一人の少女の顔が浮かんだ。
（あおいさんも一緒に和菓子体験できないかな）
　スマホを取り出し、メールを打ち始める。

　当日の土曜日。
「こんにちは、彰尋くん」
　駅前の待ち合わせ場所に、白いワンピース姿のあおいが現れた。
「こんにちは。来てくれてありがとう」　
「私こそ、誘ってくれてありがとう。和菓子、私にも作れるかな？」
「うん。多分練切りは料理を作るというより、粘土細工を作るような感じで楽しんで作れるんじゃないかなって思うよ」
　二人はシーサイドタウン駅ビル「ｍｉａｏ」へ向かった。

　何種類かの和菓子から、作りたいものを二種類まで選ぶことができるという。
「お互い作ったものを交換したりできたらいいね」
　彰尋は、気になっていた練切りを作ることにした。
　並んでいる手本を眺め、どれにしようか考える。
「６月なので、この季節にある紫陽花の花びらの形のものと、うさぎの形に挑戦してみようかな」
　あおいも目を輝かす。
「うさぎ、可愛いね。私もうさぎ作ろう。それと、バラの形にしようかな」
「いいね」
　二人は身支度して手を洗い、作り方の説明を聞いて材料を受け取った。
　彰尋はまず紫陽花に取り掛かった。
「２種の餡て花びらの色を表現するのがとても素敵だなと思うけど、上手く表現できるかな」
　隣ではあおいがかぼちゃまんじゅうに挑戦する。
　淡い青と紫に着色した餡を丸く薄く伸ばし、餡玉を入れて丸める。
　二つをくっつけて、指で上手くなじませていく。
　そして三角棒で線を入れ、仕上げていく。
（……なんとなくそれらしくできたかな？）
「すごい！　彰尋くん、上手だね」
　歓声を上げたあおいの台の上には、バラの形ができている。
　お手本ほどうまくはないが、まあバラに見えた。
「ありがとう。あおいさんも上手だよ」　
「ありがとう」
　目を細めるあおい。
　それから二人はウサギの練切りを作り始めた。
「お手本を参考に……真っ白の練り切りに、ピンクの餡で耳の中や目の部分を色付けて。
「うわあ、可愛い」
「本当だね」
　並んだ二匹のうさぎは似ていたけれど個性が出ていて、可愛らしかった。

「こんなにも可愛らしいお菓子、少し食べるのがもったいないかな」
　そう言いながら彰尋はスマホを取り出し、撮影する。
「そうだね。でも食べないのももったいないし……」
　あおいもつぶやきながら、お菓子を撮影していた。
「こういう機会に作れてよかった」
　和菓子を見るたびに、今日のことを思い出すかもしれない。
　幸せを感じつつ、彰尋はあおいと共に和菓子を味わった。