もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！｜リアクション

もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！

〇部活休みの和菓子ウィーク

　羽生碧南は、バスケット部のキャプテンだ。
　放課後、いつものように部活に直行しようとして気が付いた。
「あ、今日練習休みの日だっけ」
　気の抜けた気分でゆっくり下足場で靴を履き替えていると、バスケ部の後輩二人──２年の浅見柚乃と１年の霧生愛がやってきた。
「先輩っ！」
　声をかけてきた愛を柚乃が睨むのを見て、碧南は内心ため息をつく。
　慕ってくれるのはいいのだが、この二人どうも仲が悪い。
　相変らず火花散らしつつ、
「先輩、これから予定ありますか？」
　と柚乃が聞いてきた。
　一瞬家で待っている乙女ゲームのキャラたちが浮かんだが、ひとまず脇にどけていてもらい、
「……特に何も」
　と答えると、柚乃が一枚のチラシを見せてきた。
「ねこしま和菓子ウィーク？」
「そうなんです。楽しそうなんで、一緒に行きませんか」
　そこに愛が口をはさむ。
「無理しなくていいんですよ？　先輩が行きたいところあったら、私が付き合いますから」
「何言ってんのよ、私が先輩を誘ってるのに邪魔しないで」
　碧南を誘おうとしてやってきた柚乃は、愛と出くわしてしまったらしい。
　色々と火花を散らす二人を、碧南はなだめる。
「……まあまあ、和菓子ウィーク行こうよ、美味しそうだし」
　改めてチラシに目を通すと、スタンプラリーという文字が躍っていた。
「スタンプラリーをやってるんだ。これに参加してみよう」
「「はい」」
　柚乃と愛の返事が重なり、顔を見合わせた二人は、次の瞬間そっぽを向いた。

　最初に訪れたのはシーサイドタウンの和菓子屋「萩屋」。
　夏の和菓子──寒天寄せや抹茶ゼリー、水ようかんなどが並んでいる。
「いろいろあるね。どれにしようかな？」
　早速和菓子を見て悩んだが、
「いろいろ注文して３人でシェアしない？　私はこれにしよう、綺麗だし」
　碧南は、パステルカラーのビー玉が入っているような寒天寄せを選んだ。
「わあ、綺麗ですね。私は抹茶ゼリーにします」
　柚乃が言うと、
「なら、私はこっちのピンクの水ようかんにしようかな」
　と愛がケースの中を指さすのだった。

　注文して喫茶スペースに座ると、店員さんが和菓子と一緒に麦茶を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
　麦茶を飲み、和菓子を分け合うことにした三人だが。
「ちょっと、切り方雑なんじゃない？」　
「それより、先輩の切り方不公平じゃないですか？」
　また揉めだす後輩たちに碧南は苦笑して止めに入る。
「こらこら、二人ともケンカしないの」
　ようやくケンカも収まり、和菓子をいただく。
「和菓子ってかわいらしいよね。食べるのがもったいない」
　……と言いつつ、でも食べちゃうのだけれど。
「うん、美味しい」
　和菓子の美味しさに目を輝かせた碧南は、夢見る瞳になる。
（『君のように美味しそうに食べてくれる人は初めてだよ』イケメン和菓子職人の彼の笑顔に、恋に落ちて……）
　例によって乙女ゲーの世界にトリップしてしまう。
　二人の後輩は顔を見合わせつつ「また……」と生暖かい目になる。
「先輩、スタンプラリーですからあんまりゆっくりしてられないですよ？」

　そんなこんなで賑やかに盛り上がりつつ、スタンプラリーはコンプリートすることができた。

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