もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！｜リアクション

もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！

〇姉妹でもちもち♪

　３月の卒業式までは寝子高の制服を着ていた森篠琳子だが、先月末に新人研修を終え、正式に配属も決まった。
　今は寝子島信用金庫（ねこしん）の制服を着て、テラー係（窓口担当）として働いている。
（就職して３か月目、それなりに余裕が出てきたわね）
　とはいえ、交際中の彼氏、秋沢覚は渉外係として結構多忙らしい。
（ここ最近は電話やＮＹＡＩＮでのやりとりばかり……）
　ちょっと寂しさを感じつつ、今日も17時30分には仕事が終わった。
　更衣室で着替えを終えると、入社同期で同じテラー係の吉沢さんに声をかけられた。
「和菓子ウィーク？」
「そう、一緒に食べに行かない？」
　同期と言っても吉沢さんは大卒なので自分より4歳年上だったりするのだが、一番仲良くしているので、誘われたら断る理由もない。
「はい」

　向かった先はねこしんからそれほど離れていない和菓子カフェだった。
　きょろきょろしていると、吉沢さんが勧めてくれた。
「水まんじゅうがここの名物なんですって」
「そうなんですね。それじゃ、それにしようかな」
　注文した後、吉沢さんと今日来たお客さんのこととか、いろんな話で盛り上がる。
「あ、来たみたい」
　まもなく届いた和菓子を見て、琳子は目を見張る。
「え、綺麗……まるでビー玉で作られた手毬みたい。これ、本当に食べれるの？」
「もちろんよ、食べてみましょ」
　何だか食べるのがもったいないと思ったが、水まんじゅうを切り一口口に入れる。
「美味しい……」
　涼やかな口触り、甘すぎない後味で、とてもおいしかった。
「お土産、買っていこうかな」
　妹の顔が思い浮かんだ。

　小学4年生の森篠奏子は、家で時計を見上げ、つぶやいた。
「今日はお姉ちゃん、帰るのが少し遅いかな」
　ねこしんの窓口係として働く姉は、余程のことがない限り定時で帰れると言っていたけれど。
「何やってるのかなー？　ああ、きっと彼氏とデートしてるんだ」
　お姉ちゃんが大好きな奏子は、気になってしょうがない。ついいろいろ妄想してしまう。
（きっと今ごろはどこかであんみつとか食べてるのかな？　そして……）
　奏子の脳裏に、抱き合う二人の姿が浮かぶ。

　覚「琳子、俺、今夜はおまえを帰さへん」
　琳子「秋沢さん……」
　そのまま唇が重なり……

「そしてそのまま彼氏の部屋で熱い一夜を過ごして……そしてできちゃった結婚！」
　アホな想像を巡らし、自分の想像に恥ずかしくなってキャーと叫ぶ。
　……一応９歳の小学生である。ドラマや少女マンガの見過ぎだろうか？

「ただいま。……何してるの？」
　そこへ琳子が帰ってきた。
　挙動不審な奏子を見てドンびいている。
「いや、何でもない！　おかえりお姉ちゃん、遅かったね」
　ごまかしつつ無邪気な笑顔で姉を見つめる奏子に、琳子は追及しない方がいい気がして手に持った袋を差し出した。
「これお土産。お菓子だからごはん食べてからね」
「わーい、ありがとうお姉ちゃん☆」
　そのまま夕食となった。

「ごちそうさま！　それじゃ、お土産食べよう♪」
　夕食後、琳子の買ってきたお菓子を開ける。
「あ、わらび餅。おいしそう！　いただきます」
　きなこと黒蜜をかけ、食べ始める。
「あ、美味しい」
「奏子、ほっぺにきな粉がついてるわよ」
　琳子は、とってあげようと顔を寄せて奏子の頬に触れるが。
　ぷに。
（？　何か不思議な感触……）
「えっ、ほっぺがもちもちする」　
　いつの間にかほっぺがもちもちになって、琳子のほっぺともちもちくっついてしまった。
「な、なにこれ？」
　驚く琳子だが、奏子は嬉しかった。
「なんだかしらないけどこれはいいかも☆」

　数分してほっぺはようやく離れた。
「何だったのかしら？」
　安心した様子の琳子だが、奏子はちょっと不満だ。
「今度は別のお菓子にしよう」　
　と、奏子はもう一つのお饅頭を食べてみる。
　琳子も釣られて食べてみると……
（えっ、なにこれ？）
　奏子の頭の中に、見覚えのない光景が浮かんだ。
　いや、この制服は姉が通っていた中学のものだ。どうやら家庭科の調理実習らしい。
「きゃっ！」
　今より幼い姉の声だ。
　どうやらボールで混ぜていた中身を半分こぼしてしまったらしい。
（お姉ちゃんもこんな失敗したんだ）
　微笑ましいな、と思って、ふと目を上げると。
　現実の姉は顔を赤くして震えていた。
「……お姉ちゃん？」

　琳子にも奏子の思い出が見えていた。
　ついさっきの奏子の妄想の思い出だった。
「かーなーこ！　あんた何考えてるのよ！」
「ひゃあっ！」

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もちもち思い出、ねこじま和菓子ウィーク！

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