ボードゲームを脱出せよ！　『Cliff＆Farm』｜リアクション

ボードゲームを脱出せよ！　『Cliff＆Farm』

桜井ラッセルは目をぱちぱちと瞬く。
たった今、目の前で人間が２人、ボードゲームの中に吸い込まれるのを目撃してしまったのだ。
「ねぇ、今この中に！」
　寝子高ミステリ研究会の創設者であるブリジット・アーチャーが言う。
「えぇ……確かに見たわ」
　彼女に呼ばれたという神野美野梨がボードに手を伸ばすと、隣に居た仙藤蒼が制止した。
「今は触らない方がいいと思う」
　彼女の言葉に美野梨はこくりと頷く。

『骨董品のボードゲームを始めると、ゲームの中に吸い込まれてしまい、クリアするまで外に出られない』

　そんな噂があるボーゲーム、『Ｃｌｉｆｆ＆Ｆａｒｍ』
　先ほどの自己紹介によると、今ここにいる人間は皆、噂につられて集まったらしい。
「うわ、これ野々とみわちゃん先生か？　フィギュアの形が……」
　八つの眼の前で、ボード上の小さなフィギュアが、野々ののこと久保田美和を模した姿に変わってゆく。
　寝子島のゲームショップで見つかった『Ｃｒｉｆｆ＆Ｆａｒｍ』の前で、どうしたものかと話し合っていると、業を煮やしたののこが「私が確かめてくる！」とサイコロを握り、危ないと止めようとした寝子高教師、美和を巻き込んで吸い込まれてしまったのだ。
「あー、いいかな？　どうしたって、中に入って助ける人間は必要だと思うんだ。俺は２：２で別れて入ることを提案するが……皆の考えはどうだ？」
　ラッセルが３人の顔を順繰りに見ると、蒼がポケットからスマホを出して言った。
「みんなスマホは持ってるよね？　ラッセル君の案に加えて、中と外で情報交換しながらゲームを攻略するのが効率的だと思うんだけど、どうかな？　……まぁ、中でもスマホが使えればの話だけど」
「そうね、その方がいいかも。外にいる人はネットで色々調べて、適宜情報提供すればいいし」
「中と外で情報共有できるのは大きいわね」
　蒼の提案に美野梨とブリジットも頷いた。

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