ボードゲームを脱出せよ！　『Cliff＆Farm』｜リアクション

ボードゲームを脱出せよ！　『Cliff＆Farm』

「あ、あづぅぃ……まだ朝なのにぃ」
「先生ぇ、言わないでくれぇ」
　うんざりした様子の美和に、ラッセルはぐったりして答えた。特に動いていなくても体中汗まみれになり、陽光に照らされている部分は焼けるような痛さすら感じる。
「日焼けってのは、火傷の一種なんだってな」
「そりゃあ、農家さんは日の出前に動きたくもなるわよね！」
　虫の発生は収まったものの、四方八方へと伸びる茎を押さえるため、計画的に新芽を取り除かなければならない。収穫のことを考えて支柱を立て、茎を紐で結ぶ。
　朝一番で水やりを終えた地面は生暖かく、熱気すら発しているような気がする。休憩用の東屋ではののこと蒼が、互いにうちわであおぎあっていた。
「せめて扇風機ねぇかなー」
「わたし、お風呂とビールがいい……」
　美和の言葉に（んなアホな）と力が抜けたラッセルの目に、地面から吹き上がる水柱が映った。
「んん？」
「何か、水とは違う匂い……？」
　首を傾げるラッセルの隣に、ののこと蒼もやってきた。東屋の横１０ｍほどの所にわき出た水柱から降る飛沫に、くんくんと鼻を鳴らす蒼。しばらくして噴出は穏やかになり、湧き出た流水を溜める窪地と囲いが勝手にできあがってゆく。
　ブリジットと美野梨からの『イベントカードで温泉が出た』というメッセージに、４人が興奮に沸いたのは言うまでもない。

「ふぃー、極楽極楽ぅ！」
「先生、おじさんみたい！」
「ひどいなぁ野々さん、私傷ついちゃうー」
　男湯と女湯に別れている入り口でラッセルと別れ、蒼は温泉に飛び込む。
　思う存分汗を流し、体を伸ばしたら、何故か用意されていた浴衣に着替えた。
　温泉を出て、宴会場らしき広間への廊下を歩く。ラッセルと再会したので、手を上げて挨拶した。
「あっ、いい匂いがする！」
　ののこがだっ、と駆け出して飛び込んだ広間には。
「まぁ！　なんて素晴らしいんでしょう！」
　美和が頬を染めて叫ぶ――バイキングが待ち構えていた。
「俺、冷しゃぶいくわ」
「わたし天ぷら！」
「えー、もう先生迷っちゃう！　やっぱお刺身かしら」
　煌びやかなごちそうを前に突撃する３人を見て、蒼はお皿にサラダを山盛りにした後、別皿にステーキと白いご飯をよそう。
「あー、トマトの丸かじりって、どんな感じかな？」
　フォークで刺したトマトを、口に運んだ。

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