輝くような、普通の日｜リアクション

輝くような、普通の日

　◆第五章「静かにしたかったけど……」

　授業も終わり、何をしようかと考える水上桜。
　今日は部活も生徒会も休みのため、自由時間が幅広く残されていた。

「んん……久しぶりにアクセ作りでもしようかな……？」

　ふと思い立って、シーサイドタウンのキャットロードへと寄り道することに。
　そこには彼女の行きつけの素材屋があり、いくつかの足りない素材を購入してから何処かで作ってみようと思ったようだ。

　素材屋への道を辿る途中、往来のど真ん中で騒がしく地図を見ている５人組の男たちがいた。
　黒髪の男は地図を広げ、白黒の三つ編みの男は地図を指差し、代赭色の三つ編みの男は地図の別の場所を指差し、プラチナブロンドの三つ編みの男は辺りをキョロキョロ見回し、ベージュブラウンの三つ編みの男はパンフレットを片手に言い争いをしている。

　何処かで見たことあるような気がしたが……思い出せない。仲良く喧嘩でもしているのだろうかと、桜は男たちの隣を通り過ぎようとした。

　その瞬間、地図を持っていた男とぶつかりそうになったため、慌てて身体を捻った。
　男の顔を見た瞬間、最初は誰だったかと思ったが……徐々に記憶が蘇り、その男が「大発見！　ウチはこんなところです！」という番組に出ている俳優・霧水砕牙であることを理解する。

「おわっ、ごめん！　地図で見えてなかった！」
「あっ、いえ、こちらこそごめんなさい！」

　思わず謝ってしまった桜。周りの男達――木々水サライ、金宮燦斗、エーミール・アーベントロート、エレン・アーベントロートも同じように謝罪の言葉を述べる。
　スタッフなのかな？　と思い尋ねてみれば、どうやら今日はプライベートな旅行だそうで。

「だからさ、このへんで面白い場所ないかなと思って探してたんだ」
「なるほど。……ううん、この辺りで面白い場所……」
「どんなところでもいいですよ。我々、今日はだいぶ暇なので」
「じゃあ、ええと、地図見ながら教えても？」
「いいけど、そうなると６人で会話は邪魔になりそうだな」

　エレンのその一言で、どこか良い休憩場所はないかと辺りを見渡した桜。
　丁度往来の反対側、大通りを少し通り抜けた先に喫茶店「猫の宮」があることを思い出し、そこへ向かおうと男たちに告げる。
　彼らはどうやら、話には聞いているがまだしっかりと腰を落ち着けて店を堪能していなかったそうなので、満場一致で猫の宮へ。

　にゃあんと看板娘のナナが鳴き、いらっしゃいませと店主の猫乃宮ヤマトが声をかける。
　空いている席へと座り、それぞれがメニューを開いて……桜はラテアートに気づいた。

「あ……このお店、ラテアートとかもしてくれるんだ……」
「はい、最近始めたんですよ。どうですか？」
「んー……じゃあ、この猫のアクセサリーをモチーフとか大丈夫ですか？」
「大丈夫ですよ。ちょっとお写真撮りますね～」

　ぱしゃりとヤマトが写真を撮って、参考画像を用意。男たち５人もそれぞれ品を選んだため、それでは、と話を再開。
　しかし砕牙が先程のやり取りを見ていたのか、猫のアクセサリーを褒めてきた。そこからさらに話が広がって、男たちだけでも十分煩い空間が出来上がってしまう。

（うぅん、楽しいのはいいけど……もうちょっと静かにできないのかなぁ？）

　こっそりと心の中で呟いた桜。お冷をちまちまと口にしつつ、砕牙達へおすすめするスポットをいくつか地図内に書き込んであげた。
　桜のオススメのスポットはまだ彼らも行ったことがなかったため、今日この後にでも向かうそうだ。

　その後、ラテアートが届く。寸分違わぬアクセサリーに、ちょっぴり驚きを得たりもした。

（アクセ作りは……また今度でいいかな）

　頂いたラテアートはもちろん、美味しく飲み干しました――。

このページにイラストを設定する