【修学旅行】アッツイ、タイに行きたいッ！｜リアクション

【修学旅行】アッツイ、タイに行きたいッ！

●二日目：バンコク三大寺院・その２

　エメラルド寺院を堪能した一行は、ワット・ポーへと移動した。
　色鮮やかなモザイク模様の四つの仏塔を抱くワット・ポーは、バンコクで一番古いお寺で、タイ最初の大学としても知られている。１９世紀には医学や天文学、歴史学を学ぶことができたそうで、タイ式マッサージの総本山でもある。
　そして、ワット・ポーの見どころといえば何と言っても、全長46m高さ15mもある巨大な寝釈迦像だ。
　その姿は金色で荘厳。悟りを開き涅槃の境地に達したという仏の顔は半眼で穏やかである。
　細長いお堂を寝像にそってぐるりと回った羽生碧南は、足裏のほうまでやってきた。
　この足裏がまた有名で、世界の中心にそびえるという須弥山や、バラモン教から生まれた仏教の宇宙観を現した１０８の図が、螺鈿細工で描かれているのだ。
「人々に幸福をもたらす足裏か。お釈迦様の足裏をくすぐってみたらどうなるかな……」
　こしょこしょ。もちろん何の反応もないが、反応がないゆえに却ってドキドキする。
「……お釈迦様、見てたかな。あとで罰が当たるかも？」
　などと思ったことは割とすぐに忘れた。
　タイ古式マッサージの東屋を見つけたからだ。
　何しろ飛行機で６時間。寺院巡りも案外歩く距離があってクタクタだ。
　碧南は誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように東屋の中に入っていく。
　中には十人以上のマッサージ師の男女がいて観光客の体をほぐしていた。
　代金を払うとウェアに着替えて簡素なマットに案内され、うつ伏せに横たわるよう指示される。
　言われるがままに枕に顔を埋めると、お姉さんが施術をはじめた。
「キモチイイ？」
　日本語だ。観光客の言葉を聞いて覚えたのだろう。
「うわぁ。気持ちいいー」
「キモチイイ、キモチイイ」
　背中から腰にかけてをぐいぐいされるうち、あまりの気持ちよさにうとうと。
　そして碧南は夢を見た。
　――俺に会いに来ないなんてひどい女だ。
　――ぼく、ずっと君を待ってるんだからね！
「ファッ！？」
　夢の中に出てきたのは、忙しくて積みゲーとなっていた乙女ゲームの未攻略なイケメンたちだった。
　彼らに夢の中で責められるとは！
　これがブッタの罰であろうか！
「ごめんね。やるよ、修学旅行から帰ったら必ず！　ってイターーー！」
　気づけば足の指の間を棒のようなものでぐりぐりされている。お姉さんはめちゃくちゃイイ笑顔だ。
「ダイジョウブ、キモチイイ！」
「いえっ、けっこう痛いですー！」

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