ハッピーバースデー！　５月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　５月☆

　呉井陽太はケーキの箱と誕生日プレゼントをもって、友人の志波武道のアパートへ向かっていた。
　改めて先日のメールの履歴を確認する。

『武道君、5月18日空いてる？
誕生日のお祝いしたいから、おうちに行ってもいいかなぁ？　お返事まってまーっす♪』

　と、送ると、

『空いてる空いてる。もちろんウェルカム！』

　ノリノリのメールが返ってきたので、向かうことにした。

　武道は床の水拭きを終えて、額の汗を拭った。
「よーし」
　誕生日に陽太がお祝いに来てくれるとのことなので、部屋を掃除していたのだ。一段落したところで普段着に着替え、お湯を沸かしていると、家のチャイムが鳴った。
　火を止めて、玄関へ。
「どーも、お邪魔しまっす」
「いらっしゃーい。我が住処！」
　陽太は珍しげに玄関を見回す。
「入口からカワウソいっぱいだねぃ」
　カワウソ玄関マット、カワウソスリッパは可愛くデフォルメされたデザイン、コミカルだが可愛らしい。
「おお、カワウソいっぱいで和むわー」
　部屋はカワウソグッズに溢れていた。武道はベッドのぬいぐるみを抱いて、それを指で突く。
「一人暮らしは油断するとグッズが増えちゃうんだよな」
「文句言う人もいないしねぃ」
「歯止めがきかなくなるから良くないんだよなー」
　と、陽太がテーブルにケーキの箱を置いた。
「これ、うちのお母さんが作ったケーキ」
「凄いな、手作り？」
「開けてみてねぃ」
　武道はドキドキしな柄、箱を開封する。
「お、チョコレートケーキ！」
「濃厚ガトーショコラ。それと、特注の」
「これは」
　ケーキにチョコレートプレートが乗っていのだが、カワウソシルエットだった。
「おおっ」
　チョコレートに写真などを写してくれるサービスを行っているケーキ屋に注文したのだ。
「カワウソ尽くしの誕生日にしたいと思ってねぃ」
「食べるのが勿体無いな」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに」
　十九本のロウソクを立て、吹き消してもらう。
「スイマーの肺活量なめんなよ！　ふーーー！」
　火は一気に消え、すぐに陽太の拍手が入った。
「おめでとー！」
「ありがとう陽太君！　おめでとう、俺！」
「一足先に10代最後の年に突入だねぃ」
「そうか、俺も19かー」
　しみじみ。
「どんな形でも、来年もお祝いするよー」
　武道は嬉しそうに頷いた。
「ありがとうっ」
　ケーキのお供にブラックコーヒーを淹れることにした。
「何、それ、コーヒーなのん？」
　ドリップコーヒーの袋、カワウソが描かれていた。
「あぁ、動物柄のパックに入った限定コーヒー。中身おんなじで、種類が５０種類、その中の一つなんだ！」
「あー、カワウソが入ってるわけじゃないんだねぃ」
「さすがにないない」
　お互い笑い合って、ケーキを切り分ける。
　ビターな味わい、甘さ控え目のガトーショコラ。大人に近づいた誕生日にはぴったりだ。
「あっと、ついまったりしちゃったけど、これ、誕生日プレゼント♪」
「マジか！」
　ケーキの他に出てくるとは思わなかったのだ。予想外だが、陽太の気持ちが嬉しい。
「ありがとう陽太君。開けていい？」
「もちろん。いやぁ、見つけた時ビビッときて、武道君に贈りたかったんだわー」
　包装紙を丁寧にはがして箱を開ける武道。
「お、ネクタイ！？　ありが……」
　武道は不思議そうに観察して、
「カワウソだー！」
　シルエットがカワウソなので、近くで見ないと分からないので、普段遣いもできる。
「使ってねぃ」
「大事にするよ！」

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