バズりたい！　猫の宮！｜リアクション

バズりたい！　猫の宮！

　◆第一章　「海の提案」

　おなじみの猫の宮のドア。キィ、と軽く押して小山内海は猫の宮の店内へ。
　ヤマトが海に気づくと、いつもの席へどうぞと案内する。

『何か、考えてたんですか？』
「えっ？　ああ、ええとね」

　瑞毅とヤマトが何を考えていたのか細かに説明すると、海は楽しそうだなぁという表情を浮かべていた。
　それと同時、自分が出せる提案はなにか無いかとお茶とお菓子を頼んでから考える。

　にゃおんとナナが鳴いたのを見て、ああ、と思い浮かべたのはナナとお菓子の宣伝動画。
　猫生菓子を作る動画と、ナナに会えるという触れ込みの動画を作ったらどうかと海は提案を出した。

「なるほどね……。しかし、出演者はどうしようかね？　お前さん出るかい？」
『私はスケッチブックを書いた文字を見せなきゃならないから、あんまりいい感じにならないかも……』
「そうか……。ああ、いや、でも確か小山内は絵を描くのが上手かったよな？」
『はい。美術は得意ですよ』

　それなら、と瑞毅がメモ帳に軽く絵を描いてみせる。
　こんな感じの絵がつけられたらいいなと思ってるんだけど、と見せてきたのは……少々拙い猫の絵。
　可愛らしい感じがいいと彼は言う。

「タイトルとか、そういうところで使えたらなって。動画ってほら、絵のインパクトも必要だろ？」
『なるほど、確かに。私の絵でよければ』
「おう。動画編集用に余白多めに作ってもらえると助かる」
『わかりました』

　そう言って海は注文した猫生菓子とお茶を受け取り、一口。
　その隣を通り過ぎるナナをじっと見つめ、ヤマトにちょっと撮ってみてもいいかと許可を得てそっとスマホを取り出して撮影を始めた。

　ナナは動画撮影されても、普段どおりに毛づくろいをしている。
　それどころか撮影している状況がわかっているのか、海に向けてにゃぁんと鳴いている様子が撮れた。
　手を差し出してみれば手を乗せてくれたり、撫でられると嬉しそうにしているナナ。

　思わぬところで撮れた動画ではあるが、意外にも使えるなと判断した瑞毅。
　動画データを海から受け取って、少し編集作業に手をつけ始めたのだった。

このページにイラストを設定する