バズりたい！　猫の宮！｜リアクション

バズりたい！　猫の宮！

　◆第二章「誠也の閃き」

　以前、猫生菓子に新たな閃きを与えた高瀬誠也は外の看板に書かれている『動画撮影の提案募集！』の文字を見て、猫の宮へ足を踏み入れる。

「こんにちは、猫乃宮さん」
「おや、いらっしゃいませ。今日もワンちゃんの生菓子にします？」
「ええ、お願いします。それと……」

　外の看板を見たことを告げる誠也に対し、瑞毅とヤマトが助かると言いたげな表情を見せた。
　と言っても何かを閃いたわけでもないので、３人で知恵を絞り出すところからになるのだが……。

　ふと、誠也は届いた犬のモチーフの猫生菓子を見て、これだと閃く。
　猫生菓子は猫だけを作るわけじゃないというアピールを、全面的に押し出してみてはどうかと。
　初めて彼が訪れた時に、ヤマトは言っていた。この店では木型を１から作り出して作っているから、時間さえ貰えれば様々な動物が猫生菓子と同じ製法で作れると。

　当然、そんな事情を知らない瑞毅は驚く。
　餡を練って自分で成形するところまでは知っているが、まさか木型をヤマトが作っているなんてと。

「えっ、アレって木型を自分で作ってんの！？」
「らしいですよ？　俺が初めて来たときには、数日待たされましたからね」
「はぇー……。確かにそれはアピールポイントになるな」
「そのためにも、木型を作るところはぜひ動画にしてもらいたいですね。可能ですか？」
「うーん、企業秘密ってわけでもないけど、ちょっと恥ずかしいなぁ……」

　照れくさそうに笑うヤマトだが、誠也は見せるなら今しかないと念を押し、木型の作成動画を撮り始めることに。

　厚めの木に作る型の下書きを彫り、彫刻刀を使って枠を削り出すヤマト。彼は軽く説明を入れながら削り出しを行ってくれたため、動画にする時は字幕にするのが良いだろうと誠也はアドバイスを入れる。
　３時間ほどの削り出しで出来上がったのは、可愛らしいトイプードルの木型。ふわふわの毛並みが細かく再現されており、誠也も目を輝かせていた。

「す、ごい……。みなさん、見てますか？　これが猫生菓子を作っている方の技術ですよ……！」

　動画を見ている視聴者のために、誠也は声を上げる。
　この技術を使ったお菓子を食べられるのは、猫の宮しかないぞと念を押すように。

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