とまどいエチュード｜リアクション

とまどいエチュード

（暗転。突如演題の前に座る、喜矢武あいおと落合まゆら。　
　二人、派手な生地の色の着物を羽織っている）

「というわけで第二幕のスタートですぅ！」
「どうして私たち、幕間に出ているわけ？」
「幕間の進行役ってやつですぅ！　講談師や弁士、舞台にはこうした進行役が必要不可欠なのですぅ！　夢の舞台の召喚に従って、私喜矢武あいおと落合まゆらが勤めさせていただだきますぅ！」
「何なのよ、この格好は」
「それは進行役といえば、着物にジュリアナ扇子が定番なのですぅ！　影絵で、かしらかしら、ご存じかしらってやるほうがまゆらはお好みですか？」
「何を言っているのかわからないわ……」
「舞台ってとっても楽しいのですぅ！　狂乱と怒濤の内に、第二幕、スタートなのですぅ！」

　　――「キングス」はどこだ！
　　―――令嬢を探せ！

　かりそめの平和に、普段は安穏としている暗黒街の夜。
　今夜その静寂は破られ、街は追うものと追われるものの狩猟場と化した。
　あちこちで探照灯が空を照らし、けたたましいサイレンの音が響き渡る。街頭に停められたパトカーからは一斉に警察隊が吐き出され、靴音が響き渡る。
　マフィアの支配するこの街では、正義が悪で、悪が正義。
　混乱に乗じて、点灯から盗みを働いたり、市民に暴力行為を行う警官も少なくない。
　混乱と喧噪の舞台の上で、一人の警官が下手によろめき出る。
　マスクを外すと、そこから現れるのは八神修の秀麗な顔。
　
　彼にあてがわれたのは『腐敗しきった警察組織の中で、それでも正義を遂行しようとする一匹狼の警察』。
　無法の世界にあっても、やはり悪に手を貸すわけにはいかない。常に法と秩序の側に立つ、彼の性格にふさわしいシチュエーションと言えるだろう。
　だが、今回ちょっと分が悪そうだ。

　それでも、彼のすべきことは決まっていた。
（あおい･･････）
　彼は、この舞台に立たされる前の、幕間を思い出す。