寝子島、花と緑の博覧会『フローラル＆グリーン』｜リアクション

寝子島、花と緑の博覧会『フローラル＆グリーン』

〇スタンプラリー

　寝子高２年の稲積柚春は、特技のアロマオイルのブレンドで、シロトネラ・レモンユーカリ・ペパーミント……といった初夏の香りと虫除け効果のあるアロマオイルを詰め込んだブレスレットをつけて出かけた。
「精油や加工された後は馴染みあるけど、咲いてる姿やそのままの香りが楽しめるなんて楽しみ」
　鞄にはいつも一緒のカプセルギア、ворを入れて、花畑のスタンプラリーにやってきた。
　景色や買った物と一緒に入るようворを置いて写真を撮っている。
　ворはカプギアだけど、ぬいぐるみを連れて歩いて写真を撮る、ぬい活のつもりだ。
（一緒に思い出増やしたいな）

　柚春は昨年秋寝子高へ転校してきた。
（親が超転勤族だから、今までは半年もすれば引っ越す事も多かったけど……）
　今回は一人暮らしをして、卒業までここに住むと決めた。
　スタンプラリーをしながら今の時期の花を堪能し、ворを置いて写真を撮る。
「さすがに柚は……ないかな。木だし、簡単に植えられるものじゃないもんね」
　大体回ったかな？　とスタンプラリーのカードを見ると。
（って、ぬい活に夢中になってたら、スタンプの取りこぼしがあるような……？）
　せっかくだからコンプリートしたいけれど、そのためには今来た道を戻ってスタンプを探さなくてはならない。　　

「花畑を巡りながらスタンプラリー、楽しそうジャ～ン☆」
　いかにもチャラそうなゲーム好き男子高生、風見鶏スグリは、スタンプラリーにやってきた。
「というわけで、早速スタート！　はァ～キレイな花畑をさまよいながらスタンプ押していくの、イイネ～。あっ、こんな花があるんだ～」
　見たこともない花もいろいろあって、スグリにとって楽しい発見となった。
　さて次は、と進行方向を見ると。
（アレ？　あそこにいるのは柚春チャンじゃナイ？）
　クラスメイトの柚春の姿を見つけた。
　柚春とは、１年の時も同じクラスだったが、仲良くなれたのはパソコン部のスグリが作ったゲームを気に入って遊んでくれたのがきっかけだった。
「ヤッホ～☆柚春チャンもスタンプラリー中？」
　気軽に声をかけ、歩み寄る。
「風見鶏君！　来てたんだね」
　スグリとは彼がゲームキャラのコスプレをしていた時に出会ったため、最初はキャラの名前で呼んでしまったりしたが。
　先日偶然彼の実家のカフェを訪れたことで、二人の距離はぐっと近くなっていた。
「どこまで押した？　ちょっと見せ合いっこしよ～ヨ」
「うん、僕も進行具合を聞きたいと思ってたんだ」
「押せてない所あるネ？　教えるネ」
「ありがとう。ヒント教えてもらえると嬉しいな」
「あー、ここはネ……あのオレンジの花のあたり」
「あ、ヒナゲシだね！」
　そう言ってそちらに向かう柚春にスグリはついていく。
「フムフム、柚春チャンは花に詳しいんだネェ」
「それほどでもないけど」
　スタンプを見つけ、無事に押した柚春にスグリは近くのピンクの花を指す。
「この花とか名前分かる？　分かっちゃう？　どんな名前か教えて♪」
「えーとこれは、ムラサキカタバミかな」

（転校先で出会った人たちとは、とにかく忘れられないようにと話しかけて、馴染めそうになければ諦めて）
　そんな繰り返しだったから柚春はお友達との距離感がわからない。
（お祭りくらい、一緒に行こうって言っても良かったかな？）
　そんな後悔もあったけど、正解なんてわからなくて。
　けれど今、柚春は素直に楽しいと思えていた。

　無事スタンプをコンプリートして、一休みしようかと屋台を見ると。
「あ、花の名前の人はサービスがあるって」
　ポスターを見つけた柚春が考える。
「風見鶏君は……スグリ、ってどこかで」

「アー、そういえばオレの名前ってクロスグリからとったとか聞いたし。アレも花が咲いたりするらしいから、オレも該当するのカ」
「ブラックカラント……あ！カシスの和名だね」
「柚春チャン、ホント花のこと詳しいんだネ、スゴイッ。オレはちょっとしか分かんないから、キラキラした目で柚春チャンを見ちゃうナァ☆」
　尊敬の眼差しで見つめられ、柚春は少し照れた。
「精油の販売名が色々あるから、調べてるうちに詳しくなって」
「ンンン？　柚春チャンも柚って名前にあるし、もしかしたら？　アレ？　柚の花って見た事ないナァ」
　スグリの疑問に、柚春は自信なさげに答える。
「『柚』が花で実が『柚子』って書くらしいけど実の方が有名だし……」
「どんな花が咲くの？　柚春チャン知ってる？」
「柚子は白くて小さいかわいらしい花が咲くんだって」
「そうなんだ！　見てみたいナァ。それじゃ、花も咲くからきっと大丈夫ダヨ」
　そんな話をしながら、二人は飲み物を選んだ。

「……というわけで柚子の花の名前が入ってます」
「オレの『スグリ』も花咲くヨ」
　店員さんに名前の説明をすると、にっこり笑って二人とも無料にしてくれた。
「ハァ～、ジュース良い香りでうまうま～♪」
「おいしいね」
　微笑む柚春に、スグリは言う。
「ゲームの屋台もあるみたいだし、柚春チャンと何かしてあそびたいナァ」
　屋台に目をやり、向き直った柚春の答えは決まっていた。
「いいよ、行こう」
「ヤッタ～♪」　
　更なる思い出が二人を待っていた。

このページにイラストを設定する

寝子島、花と緑の博覧会『フローラル＆グリーン』

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧