温かい雨に打たれて｜リアクション

温かい雨に打たれて

　逆巻天野と猫館鳴は相合傘で旧市街に入った。
　アジサイを見掛ける度に二人は足を止めた。天野はスマートフォンに収めた画像と見比べる。
「これではないか」
「宝探しみたいだね」
　鳴は人懐っこい笑みを見せた。
「その宝に辿り着ければいいんだけど。この写真の場所、どこかで見たことはないかな？」
「群生地のようだね。この下の方に写っているのはシダ類で……これって九夜山で見たことがあるかも」
「九夜山か」
　天野は雨で煙る山を見て暗い表情となった。隣にいた鳴は励ますように背中をポンポンと叩く。
「たぶんだけど、登山道から近いところにあるよ。薄っすらとそんな記憶があるから」
「行くとしても腹ごしらえは必要かな」
　天野は向かいの和菓子屋を見て言った。
　表情で鳴は喜び、思い直したように俯いてモジモジする。天野は小さな背中をポンポンと叩いた。
「最初に誘ったのは僕だし、奢るよ」
「ありがとう」
　鳴は照れ笑いを浮かべた。

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