ネコジマ・イン・カオス！　―ゲームの世界と溶け合いました―｜リアクション

ネコジマ・イン・カオス！　―ゲームの世界と溶け合いました―

＞黒の、その先へ
　変わってしまった街の調査に赴いたのは、白真白だ。
　彼女は身に纏った衣服で現状を把握したようだ。
「この格好はSOCのだね！　よかった、前回のレイド戦の時のジョブとか言われなくて」
　前回は舞台が海だった為水着装備だったが、流石に今の季節には寒すぎる。それを考えると運がいいのかもしれない。
「しかし……、とうとう来るんだね、グラトニエルが。今まで結構ちょっかいかけてきてたけど本格的にこっちにって事か」
　だったら、ここでもう終わらせないと……と真白は真面目に思う。
（場合によっては寝子島だってどんな目に合うかわからないし……）
　そうならない為にも彼女は真剣に調査を行うことにした。

　今回治癒士となった彼女は魔物からの攻撃を回避し、少しずつ調査を進めていった。
　彷徨っていた一般人は碧南と二一の軽戦士コンビが対応してくれたおかげで邪魔されず調査する事が出来たし、巻き込まずに済んだ。
（これは僥倖だよね♪）
　一人影響を受けている部分を調べていくうちに、真白はある事に気付いた。黒いシミのような物は、星ヶ丘方面にはなかったことだ。しかも、途中で障壁のような物があり先には進めなかった。
「つまりは、グラトニエルもここまでしか影響を齎せなかったんだ。次はどうなるか分からないね……」
　真白はここより本土よりで決戦できればいいな、と祈るようにその場を後にした。

　暫くして。彼女の姿は黒い何かに覆われた建物の前にいた。
「これかぁ」
　真白の名とは真逆の、真っ黒な靄っぽい物。建物のいくつかはそれに覆われている。彼女はそっとそれに手を近づけてみたが、音もなく手が靄っぽい物に吸い付こうとして慌てて引っ込める。
「おぉっ、ちょっと手を近づけるだけで吸い込みそうだね」
　しかもちょっとピリピリしたような気がした。
　一先ず己に治癒系のスキルを使い、状態異常と傷を治すと少し考える。
（どう考えても対処しないとまずいよね……。今のうちにいろいろ調べてみた方がいいかな？）
　真白は障壁を生み出すスキルを何重にも使い、その黒い場所へと近づいてみる。僅かな振動はするが、彼女自身にダメージは入らない。
（よしよし、バチバチしてるけど守れてる！）
　大丈夫そうだ、と判断した真白はもう少し深めに突っ込んでみるがここで鈍い音を立てて障壁が１枚割れた。
（すかさず発動！）
　真白は瞬時に新たな障壁を生み出し、もう少し奥を見る。だが光を吸収しているのか。はたまた何もないのか、何もわからない。
（虎児を得るには……だね！）
　真白は、そのまま奥へと進んでいく。障壁が敗れるたびに生み出し、ポーションでマジックポイントを回復させながら進んでいく。だが、真っ暗で何も見えない。光源を持ち込んだはずなのに、己の手元あたりしか見えないのである。
「おかしいな。もしかして……」
　罠、と言おうとしたその刹那、強力な力が真白を吸いこもうと見えぬ手を伸ばす。思わぬ衝撃に悲鳴を上げながら、真白は吸い込まれていく。
（もしかして、この先に……）
　真白は、その先にある物を予測しながら、しばしその力に抗わずなすがまま流れていく事にした。

「うぅ……」
　気が付いた時、真白は薄暗い空間にいた。床は氷のように冷たく、つるつるしている。慌てて光源を拾うと目の前に見えたのは、鉄の檻だった。その向こうに、見覚えのある光景が広がっている。
「ここって、ケイファと戦った後に見た……！」
　冒険者のような、それでいてマネキンのように佇むだけの人々。淡く発行するスター＋画面。そして、その時には気づかなかった『状態異常：捕虜』の文字。
「ここから出る方法を探さなくちゃ！　どこかに出口とかないかな～？　捕まってるアバターの解放とかできないかな～？」
　暫くの間ランタン片手に捜査していた彼女だが、手掛かりは見つかりそうもない。しかし、後ろを振り返ると先ほど出てきた穴のようなものはまだ残っているようだ。
「どうにか解放できたら、よかったんだけど……」
　真白は後ろ髪を引かれる思いをしながらも、その穴へと入り込んだ。

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