【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト｜リアクション

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

●星ヶ丘寮～シンデレラパーティ・その１１

　時の女神はもうすこし仕事をさぼってくれてもいいのに。
　そう思えるほどあっという間に時は過ぎ、夜が更けてきた。
　時計の針は０時まであと１時間を切っている。
　人々は飲食やダンスより、プールサイドなどに腰かけてお喋りに花を咲かせている人が多くなってきた。
　ビュッフェコーナーに残っていた最後のデザートを平らげて、楡宮遠海は礼儀正しく手を合わせた。
「ごちそうさまでした！」
　充分足りるように料理を用意したはずの厨房スタッフたちも驚く、まさかまさかの展開である。
　遠海が最後まで心行くまで軽食と飲み物を満喫した結果、用意した料理が綺麗になくなったのである。
「だって残ったら勿体ないじゃない？」
　御尤もで！

◇

　花咲夢乃はパーティの最後の演出に向けてスタッフたちと打ち合わせをしている加瀬礼二の元を訪れた。
「加瀬先輩、恐れ入りますが、先に失礼させていただきますね」
「花咲さん、今日はありがとうございます。ご苦労さまでしたねぇ。いかがでしたか、入学してはじめてのパーティは」
「とても楽しかったです。星ヶ丘寮のスタッフの皆さんと、加瀬先輩のおもてなしの心あってこそですわ」
「いえいえ、大したことはしていないですよ」
　謙遜する礼二にお辞儀して、夢乃は帰る人で混雑する前に寮の自室に戻ることにした。

「素敵な一日でしたわ。自宅のベランダから、帰る方々をお見送りしましょう」

◇

「あっ……そっか、もうそんな時間なんだ」
　恵御納夏朝は時計を確認しはっとする。
「もうすぐ……魔法が解ける時間だよ、夏朝」
　恵御納夏夜も頷いた。
「名残惜しいけど、お姫様の時間はおしまい。予定通り、少し早めに切り上げて部屋に戻ろうか」
「そうだね。着替えて衣装類を返すのに時間が要るからね」
　あらかじめそうしようと話していた通り夏朝と夏夜も一足早く噴水広場を辞す。

◇

　午前０時の鐘が噴水広場に鳴りひびいた。
　鐘の音に合わせて、照明が一斉に消えあたりは一瞬闇に落ちた。
　まだ残っている人たちのどよめきが大きくなりすぎる前に、帰り道をライトアップされる。
　まるでシンデレラが駆け下りた階段よろしく、輝く階段が石畳に映し出される。
　これらはすべて礼二が仕込んだ演出である。
「驚かれる方や暗いのが苦手な方もいるかもしれません。紳士らしくパートナーの手をとって帰り道をエスコートしてくれると助かります」
　礼二の落ち着いた声が会場が流れるとシンデレラパーティの最後を飾るにふさわしい演出に、人々から自然と拍手が起こった。

　余韻を待って、檜扇舞華のアナウンスが流れる。
『お預かりした忘れ物は、ガラスの靴で間違いないですか？』
　ウィットに飛んだ台詞に、くすくすと笑い声が漏れる。中には自分の靴を確認している人もいるようだ。
『１２時の鐘の音の終了に伴い各サービスの提供を終了、当会場の閉鎖とさせて頂きます。御来賓頂きありがとうございました』
　人々が一組、また一組と、ライトアップされた帰り道に向かい始める。
『それでは、残り僅かではありますがどうか暫しの、奇跡の魔法を』
　マイクを置くと舞華は見送りのスタッフの列に混じった。
「お客様でご希望の方には編集した動画を郵送致しますのでお帰りの際出口のアンケート欄にご記入お願いしまーす」

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