【遠足】みんなでGO！東京｜リアクション

【遠足】みんなでGO！東京

〇渋谷のビルと原宿迷子

　14歳でシングルマザーになった梓智依子は、娘を出産してから４年間、育児に専念していた。
　けれどこの春寝子高１年生となって、寝子高の制服姿で渋谷駅前に立った。
（ほんの数年来なかっただけでこんなに街並みが変わるなんて）
　渋谷に来るのは中学１年生の時以来だった。
　そんなことを思いながら、駅のすぐ側の、渋谷で最も高いという渋谷スクランブルスクエアを見上げていると、
「何ボーッとしてるの？」
　自分よりも年下の同級生たちに聞かれた。
「なんでもない」
　と返事をして、みんなと一緒にビルへ向かう。
（あの時はまだ建設中だったけど……）
　とはいえ、あの時中学生だった智依子が４歳の子の母となっているのである。
　変わったというなら智依子の変化のほうがさらに劇的で、街並みのことは言えない。

（楓へのお土産は何がいいかな……）
　店内の色々なショップを見て回るが、おしゃれなお店の値段は学生たちの財布にはきつかった。
　それでも同級生たちがはしゃぎながら品定めをしているのを見ているのは楽しい。
　一通り見てから、展望施設へのエレベーターに足を踏み入れる。
「えっ？」
　動き出すと共に、立体音響と天井に広がる映像。
　度肝を抜かれて見入ってしまった。

　46階の屋内展望回廊「SKY GALLERY」へ登り、さらに智依子は驚く。
　広がっていたのは渋谷の街だけではなく、変化していくデータ映像が重ねられていた。
「わあ……！」
　不思議な感覚に、同級生たちと共に思わず声を上げる。
　さらに屋外に上ると、むき出しの空と透明な壁一枚に隔てられた眼下の景色に圧倒された。
　お店で、シンボルマークをデザインしたモビールキットを見つけて、楓のためにと衝動買いした。
　
「すごかったね……お昼、何食べる？」
　しばらく渋谷の街で皆と適当に回って食事をした。
「それじゃ、原宿のほうに行こうよ」
　同級生が言って、みんなと原宿へ向かったのだが。
　その原宿で迷子になった。

　……正確には、少し離れてポケーっと立っている川添かおる先生の姿を目撃して、つい班を離れてしまった。
　さすがにジャージではなかったが、サンダル履きだ。
「何してるんですか？」
　と聞いたら、
「なにしてるんだろうねえ」
　と人を食った返事が返ってきた。
　生徒を見守っているようにも見えない。
　見かねた智依子は、近くにいる子に声をかけて、先生と同行しようとしたのだが。
　その時には周囲に子たちの姿はなかった。
　そして川添先生はふらふらと歩き出している。
「あ、待ってください」　
　なんとなく一緒についていく羽目になってしまった。

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