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四月の蒼青(あお)い空の半分欠けた月を見て彼女は笑ってる。
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もう少し、とリンが考えたのは純粋に直感だったが、まちがいではなかった。
まもなく開けた場所に出た。二層構造になっている公園の高台だ。
草刈りが間に合わないのか雑草がぼうぼうに生い茂っているが、一面緑という光景は悪くない。加えて涼しい風が吹いている。
その中央あたり。
名前はわからないが一本、見事に枝葉を茂らせた樹が生えていた。
根元には白いベンチがあった。
そしてベンチにはあの、エメラルドグリーンの髪をした少女が腰かけていたのである。
彼女は、声を出すことなく笑っていた。
黒猫は少女の数メートル先で足を止め、『どうだ?』と言わんばかりの顔でリンを振り向いた。
「ありがとう。おかげでここまで来れたよ」
黒猫に心からの礼を言うと、リンはベンチの前まで歩む。
レモングラスの香りがする。
「隣、いいかな?」
「いいよ」
少女がはじめて口をきいた。でも、唇を動かしたようには見えなかった。
風があって涼しいが、木陰に入ればなお涼しい。汗が引いていくのがわかる。
「さっき会ったよね? ええと、こんにちは」
「……」
少女は、べっ甲のような色の瞳を、しばし黙ったままリンに向けていたが、
「ああ」
だしぬけに両手を打ち合わせた。ポンと乾いた音が立つ。
「あいさつ! これ、あいさつ!?」
「あ、うん。あいさつ。こんにちは」
「こんにちは。わたし、あいさつ、はじめてした。こんにちは、こんにちは!」
変わった子だなとリンは思わないでもない。さっきの、気軽に声をかけてくれた杏那という人もなかなか変わっているが、彼女には及ぶまい。
さっき学んだことがひとつある。とりあえず名乗っておけば怪しさは減るということだ。
「僕は羽奈瀬リン、最近この島に引っ越してきたばかりなんだ。あなたの名前も教えてくれたら嬉しいな」
「なまえ……名前!?」
「え……うん、そう。嫌だったらいいけど」
「ちがう。私、名前ない。区別するなら」
と言って少女は口を開けた。シューとかシャーとか突風のような音がリンの耳を打ったが、音声には聞こえなかった。
「……になるけど、これ、人間にはわからない」
「うん……わからなかった。ごめん」
花見のときにリンは学んだ。ここ寝子島は、妖精やほしびと、あるいは、もっとたくさんの不思議の住人が訪れる場所なのだと。なんとなくだが、桜の精
さく
と似たものを感じる。彼女はさしづめ風の精といったところだろうか。
「だから、つけて」
「え?」
「つけて、名前。リンが」
「いいの?」
「だって」
また少女が口を開けた。突風が起こる。もちろんシューとかシャーという音でしかない。
「……これだったら、リンが困るから」
うふふと笑った。リンも笑った。たしかに困る。
「そうだなあ……」
リンは空を見上げた。見えるのは空。そして、半分欠けた白い月。
「きれいに晴れた青空に月……晴月(はづき)ってどう?」
「晴月、晴月、それわたしの名前?」
「気に入った?」
「気に入った」
ぱっと見は近い年齢のようなのだが、幼稚園児と話しているような気持ちになる。でも嫌じゃない。心が晴れる。瞬間的に思い浮かんだものとはいえ、晴月という名前はぴったりだと思った。
リンはリュックを開けて包みを取り出した。ひらくとおにぎりが出てくる。
「食べる?」
「それなに?」
「おにぎり。遅めのランチだよ」
なんだなんだと足元に黒猫が寄ってきた。小さくちぎって置くと、軽く匂いを嗅いでから猫は口を付けた。おかか入りだったのがよかったらしい。もしゃもしゃと平らげて、もっとくれという顔をした。
「ランチ? ああ、ごはんのこと?」
「うん。おいしいよ」
「もらう」
晴月は、黒猫がやったように鼻を近づけておにぎりの匂いを嗅いだ。
「海の匂い」
「かもね、海苔を巻いてるから。あと、中身はおかかだよ」
手に取ろうとする晴月の手に、リンは濡れティッシュを手渡した。
「拭いたほうがいいよ」
「これも海苔?」
「ちがうちがう。これは、お手拭き」
こうやって、とやってみせた。そして今度こそおにぎりを渡す。
「わかった! こういうとき『ありがとう』って言うんだ!」
晴月が素っ頓狂な声をあげたものだから、思わずリンは声をあげて笑ってしまった。
「まちがってる?」
「いいや、大正解」
ふたりと一匹だったので、たちまちおにぎりはなくなった。
猫はペロペロと前脚を毛づくろいしている。
「おいしかった」
食べるときは別として、やはり晴月は話すとき唇を動かさない。一種の腹話術とでも思うと気にならなくなった。
「あなたは……晴月は、ほしびとなの?」
「よくわからない。今日生まれたばかりだから」
事実そうなのだろう。もちろん常識からすればありえない話だけれど、素直にリンは晴月を信じた。とすれば望み薄だが、それでもリンは尋ねずにはおれなかった。
「僕は、昔会ったほしびとの女の子を探してるんだ。少しでも手がかりがあったら嬉しいんだけど」
ほしびとという存在を説明したほうがいいのかもしれない、そもそも『昔』という概念すら通じているのかどうか。でもそんな不安はリンの頭には浮かばなかった。なぜって、
「うん」
と晴月がうなずいてくれたから。
「おしえて、その女の子の名前」
「スピカ」
口にするだけで、なんだか胸がいっぱいになる。
「うん、スピカ。おぼえた。スピカに会ったら伝える、リンのこと。リンに頼まれた、って」
「ありがとう。頼んだよ」
「頼まれた。わあ、わたし、頼まれたのもはじめて!」
「僕にも頼んでよ、なんでも。袖すり合うも多生の縁、って母さんから教えてもらったんだ。前世とかの縁かどうかは分からないけど、これからにつながる縁になるかもしれないしね」
「袖? 縁?」
晴月には少々難しい言葉だったかもしれない。
「困ってることがあれば言ってほしいな、ってこと。せっかく知り合ったんだし」
「今はないけど、なにかあったら……頼むよ」
じゃあそろそろ、と晴月はベンチの上に立ち上がった。靴なんか履いていない。裸足だ。
その爪先でベンチを蹴った。
「またね」
風が吹いて、レモングラスの香りをさらった。
やっぱりだ。
予想は正しかった。
彼女はそれこそタンポポの綿毛のように、ふわりと風に乗って飛んでいったから。
太陽のまぶしさにまばたきしたとき、もう晴月の姿は見えなくなっていた。蒼青い空に、溶けてしまったかのように。
リンは溜息をついた。
また不思議な体験をしたなあ。
けれども黒猫にとっては、なんてことのない光景だったのかもしれない。猫は晴月が見えなくなっても、大きくひとつ、あくびをしただけだったから。
――『四月の蒼青(あお)い空の半分欠けた月を見て彼女は笑ってる。』 了
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四月の蒼青(あお)い空の半分欠けた月を見て彼女は笑ってる。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年05月15日
参加申し込みの期限
2021年05月22日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年05月22日 11時00分
参加キャラクター一覧
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