らっかみ子供電話相談室！｜リアクション

らっかみ子供電話相談室！

「質問：みなに美を理解してほしい」

「えーと、美意識はひとそれぞれなので･･････」
　舞華がそう答えようとすると、

「他人事とは思えないのでー！」

　ばべん！　と録音ブースの扉を開け放って、後光を背負った少女のシルエット。
　本条小萩、参戦！
　やっかい事が増えたとも言う。

　ヘッドフォンを装着し、マイクに向かって息を吸い込む。
　相変わらずハイテク系はちょっと苦手だが、そんなことは言っていられない。

「ふむー、美の道の探求者さんのようですね･･････。

　美の化身さんが、周りに理解してほしい『美』とは何でしょうか？」

　改めて言葉にしようとすると、言葉に詰まってしまう――実に本質的な事柄。

「自分の作品であったり、あるいは自分という存在そのものの美しさであったり――そういうところかと思います。
　そうすると、大切なのは『伝える』『広める』ことです」

（おお･･････）
　一同から、声にならない感嘆の声が漏れる。
　自分の世界に浸りきるのではない。他人と向き合うことが大事。
　
「今の時代は、ニャンスターグニャム、ミューチューブなど『伝える』『広める』ためのハイテクが存在しますし、あるいは自費出版、自作アイテム頒布という手段もあるでしょう」
　ハイテクの苦手な小萩だからこそ『伝える』『広める』ための努力が忍ばれる。
「いずれにせよ、どれほど美しいものであっても『伝える』『広める』ことがなければ、誰にも理解されることなく、ひっそりと埋もれてしまうかもしれません。
　――逆に言えば『伝える』『広める』ことによって、それが刺さる人の手元に、いつか届くかもしれないのです。
　
　とある画家は、売れなかった時代に自分の絵を暖炉にくべて寒さをしのいだそうですが･･････。
　小萩はそれを、とっても悲しいエピソードだと思います。そんな悲しいことがあってはなりません」

　淡々と、激することなく自分の信条を述べる。
　いつもの暴走女子ではない、表現について真摯に向き合ってきた彼女の言葉が響いた。

「小萩も、小萩を主人公にしたとっても面白い漫画を描いて、コピー本などを配布しています。
　さらに自演で舞台化したり、それをミューチューブに投稿したりして、ざっと１２億の視聴を記録いたしました･･････」
　さらりと数字を盛る彼女。それだと地球人口の５分の１が彼女の舞台を見ている事になってしまう。

「――美の化身さんも一緒に、自らの美を全世界に展開していきましょう！」

　力強い言葉に、ブースに感銘の波が広まった。

　そのすきに、明乃と舞華、どんどん質問をこなす。

　熱を持って回答してくれる人間が現れたことで、舞華はそっと席を譲る。

「質問：もうさー、国がイイオトコを支給する制度をつくったら良くね？」
「ホント。イイオトコをもっとたくさん侍らせたいわ」
「光源氏した方がよろしいかと」

「質問：オトコってホントにバカッ！　どうしたらテオさま･･････じゃなく、意中の男性に、オトメゴコロを伝えることができますか？　ぐぬぬ、明日こそは」
「面と向かって伝えたらいいのです。目を背けるな、テオ様と向き合え、明日って今さ！」
「やっちまえばいいのよ、やっちまえば」
　暴走気味、子供が聞いたらドン引きするか大はしゃぎするかどっちかのテンションになりかかっている森本女史に、淡々と答えを処理していく檜扇舞華。

「質問：タピオカっておいしいよね？」
「「おいしい！」」

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