らっかみ子供電話相談室！｜リアクション

らっかみ子供電話相談室！

「オトナのオンナになる方法？　そんなのほっときゃ勝手になるに決まってるだろ？」

　伝法な口調で、さらりと質問をなで切りにするのは森本明乃。
　
「お･･････オトナの女の人･･････」

　その容姿を見て、相原まゆ相談員がぽろりと手帳を取り落とす。

　アラフィフ世代などと呼ばれるが、５０代の女性の美しさというのは、単に外見的なものによるものではない。
　それまでの人生観、生き様、生活の習慣･･････そういったものが、すべて容姿に反映する。
　真の女性の美しさは、年を経るごとに表れるのだ。

　そういう意味で言えば、森本　明乃は美しかった。
　幼い頃からの空手で鍛えた、ムダな贅肉のない節制された体。
　寝子島図書館の館長という激務の中で磨かれた知性。
　どのような状況でも、趣味である２．５次元の演劇鑑賞を欠かさないライフスタイル。
　厳しく、自堕落にならず、それでいて人生を楽しむ。
　彼女自身の生き様が、彼女自身を輝かせている。
　
　たやすく笑みを浮かべない毅然とした様子。
　まさに回答員として適任である。

「ええと･･････何だこりゃ。わかんないな･･････」

　だが当の森本女史は、今回の仕事、全く乗り気ではない。
　寝子島図書館館長である彼女、その仕事は多忙を極める。
　お飾りの役職として、税金泥棒に徹する図書館館長も多い中、彼女の働きは精力的だ。
　教育委員会との折衝、大規模ネットワークの構築、子供向けの様々なイベントの運営から、地域の人々が利用しやすい移動図書館のシステム整備･･････。
　生真面目で、仕事の出来る彼女。
　徹底的に手を抜かず、館長の仕事をこなしていた。

　そうした中での「電話相談員の依頼」である。
　
　外面が良く、頼まれた仕事は引き受けずにおれない性格の彼女、多忙を推して参加。

　だが、質問内容を見て、心が燃えた。
　手ぬるい。
　
　バシッと言ってやらないと。

「質問：影が薄いと言われます。どうしたらいいですか？」

「影が薄い、って思うのは他人でしょ？
　変えられるのは自分の気持ちだけじゃないかしら？」

「質問：もうさー、国がイイオトコを支給する制度をつくったら良くね？」

「賛成ね。結婚だけが男と女の形じゃない。
　いろいろなゴールがあってもいいんじゃない？」

　深い人生経験に裏打ちされた様々な発言が、波紋のように感動を広げていく。
　時には対立も辞せず、の心づもりで臨んだのだが、思いのほか明乃の言葉は共感を得ているようだった。

　人生相談は、単にその表面の言葉だけで判断されるものではない。
　その言葉の裏にある、人間力が大に意味を持つのだ。

　常に自分に責任を持ち、自分を偽ることなく生きてきた彼女の、生き様そのものが説得力を与えていた。

「質問；赤ちゃんはどこから生まれるのですか？」

「ん、そんなの簡単だろ？　まず男と女が･･････」

「うわーーーーーーっ！！！！！」

　あまりに偽る事なく、そのまんまに回答しようとしてしまった彼女、さすがにストップが入る。

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