【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　いつもの起床の時間に嘉渡洲稀跡は制服姿で星ヶ丘寮を出た。
「肌寒いね」
　口にした途端、緩やかに走り始める。
　ジョギングをする感覚で寝子島高校の西門を通り抜ける。斜め前方に見える南校舎は無視した。会場となる講堂を早々に覗き込む。飾り付けは途中で、中は閑散としていた。
　稀跡は講堂内を見て回る。金属片のような物が目に付いた。床から摘まみ上げるとバッヂのようだった。背面のピンが外れていたので元の部分に嵌め込む。
　――気付けて良かった。あとで落とし物として生徒会に届けよう。
　床の隅々に注意深く目を向けた。終わるとステージに上がった。同じように見ていく。
「……これは」
　制服のボタンが落ちていた。拾うとスカートのポケットに収めた。
　足音が聞こえる。三人の生徒が簡易テーブルを運んできた。
　目にした稀跡はステージを降りると小走りで向かう。
「私も手伝うよ」
「ありがとう、助かる」
　四人は会場作りに励んだ。
　八神修は目立たないところに立ち、愛用のデジタル一眼レフカメラを向ける。直向きな姿を自然な形で収めた。
　人手が足りない時は自ら進んで手伝った。
　その間もカメラは手放さず、活き活きとした一枚を切り取る。
　目の当たりにした女子が修に聞いた。
「写真が好きなんですか？」
「それもあるけど、俺は新聞部の部長で校内新聞を定期的に発行している。その取材も兼ねているからね」
「そうなんですか。あ、もしかして先輩！？　ごめんなさい」
　顔を真っ赤にして頭を下げた。
　修は困ったように笑って言った。
「いいよ、別に。それと俺には最後の新歓祭になるから、少し力が入っているのかもしれない」
　修はステージを見やり、正面から一枚を撮った。
「……感傷的になっているのかもな」
　優し気な目で眺めると踵を返し、新たな被写体を求めて移動した。