【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

パフォーマンス
　舞台袖で月原想花は出番を待っていた。眼鏡の奥の目に覇気はなく、そわそわした様子で隣を見た。
　黒白滴は開いたスケッチブックに鉛筆を走らせる。細かい線が折り重なって重厚さを増してゆく。抽象画に見えるが、一部には人のような姿もあった。
「あの、その絵はどういう感じのものなのかな」
「テーマは死だよ～」
「え、新入生のパフォーマンスだよね？」
「適当でいいんだよ～」
　朝の時と同じように間延びした声を返す。反面、目は真剣で二枚目に取り掛かる。
　想花は近くの壁にコツンと頭を当てた。大きな溜息を吐く。朝と同じように不満が口から漏れ出した。
「……なんで新入生のぼく達がパフォーマンスをするのかな」
　耳にした雨崎荒太郎こと、拘束具を身に纏ったミスターＡが耳元に口を近づける。
「ソレモ、コノガッコウノデントウ。ツライダロウケド、マモッテイカネバ……」
「誰で、うわ」
　相手の異様な姿に想花が軽く仰け反った。
「ウンエイニカカワッテイル、ミスターＡダ。アヤシイスガタノ、マニンゲンダ、ヨロシク」
「……これだよ。死のイメージにぴったりだよ！」
　そこに司会進行役の青山絢が現れた。
「パフォーマンスの名称は決まりましたか？」
「今、決まりました！　『死のファンタジー』でお願いします」
「わかりました。では、私が紹介しますのでパフォーマンスをお願いします」
「私の絵も完成したよ～」
　滴は微笑んで言った。

　その後の十数分。滴の絵を元にした想花の創作でダークファンタジーが語られた。地獄の番人の一人はミスターＡと酷似した。
　語る程に熱を帯び、最後は大きな身振りとなった。
「あれ？　もしかして終わった？」
　盛大な拍手を受けて想花は我に返った。
「想花ちゃん、良い出来だね～」
　滴はスケッチブックを小脇に挟むと拍手を送る。
「滴さんの絵のおかげだよ」
　同じように拍手で讃えると二人は揃ってステージを降りた。
　八神修は取り終えた写真をカメラの画面に表示させる。滴の絵を見て僅かに頷く。
「悲しい感じが伝わるが……」
　顎に手を遣り、暫しの思索に耽る。