【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　講堂の舞台袖の暗がりに人知れず蠢く。全身を黒いタイツで覆われていた。更に白い包帯が身を縛り、胸部を中心に蜘蛛の巣のような模様を描く。
　その姿に満足したのか。雨崎荒太郎はニヤリと笑うと自由になる両手で黒いマスクを頭に被せた。口の部分だけが開いていて不穏な言葉を発した。
「ワレハ、ミスターＡ。ネココウノ地下ニスムモノ……」
　口調は別人で片言。素性を隠し、行動するようだった。
　重々しい足取りでステージを離れ、人目の付くところに姿を現した。長机や椅子を運び込んでいた生徒達は驚きで手を止める。
「ワレガ、チカラヲ、カソウ」
　ミスターＡとして重々しい足取りで近づく。
　会場作りを手伝っていた嘉渡洲稀跡は切れ長の目で見詰める。速やかにスマートフォンを取り出し電話を掛けようとした。
「マテ、マテ！」
　拘束具を物ともしない速さで駆け寄った。
「ドコニ、カケル、ツモリダ？」
「不審者は警察に通報、ね……」
「コレ、エンシュツ。フシンシャ、チガウ。モリタテヤク、ゼッタイ」
　片言で懸命に訴える。稀跡は改めて全身を見て、完全に不審者、と言い切った。それだけでなく、スマートフォンに目を落とし、再び操作を始める。
　ミスターＡは大いに慌てた。片手でマスクを捲って顔半分を見せた。
「ほら、見てよ。ぼく、水泳部の三年の雨坂だよ。名前くらい聞いたことがあるよね？　雨坂って。わかって貰えたと思うから」
　すっぽりと顔を覆って額の汗を拭うような動作をした。
　目にした稀跡は神妙な面持ちとなる。
「聞いたことがある、かも」
「ソウイウコトダ。キョウハ、ミスターＡで、ヨロシク」
　元の調子を取り戻し、白い歯を見せて笑った。
「……よろしく、です」
　先輩と知り、少し言葉を改めた。
　八神修は舞台袖に身を潜めて一枚を撮った。画面で早速、確認する。
「……うん、不審者だね」
　にっこり笑って言った。