【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭｜リアクション

【新入生歓迎会】情熱のイッサイガッサイ新歓祭

　新歓祭の司会進行役は多方面からの推薦で青山絢にすんなりと決まった。本人は驚きつつも引き受けた。以前の経験が後押しする形となった。
　当日は早めに学校に登校した。準備に追われる講堂のステージに立ち、パフォーマンスの順番が書かれた紙を見ながら紹介の言葉を口にする。
「問題ないわ」
　安堵の表情を浮かべた。直後に深い思考に陥ったかのように眉根を寄せる。目が落ち着きを欠き、ちらちらと見る。生徒がいるばかりで不審な者を目にすることはなかった。
「考えすぎよ」
　自身に向けた言葉で表情が緩む。
　――理事長が不在の今、トリエンナーレの時のような格好で司会をすることはないわ。
　絢は軽やかにステージを降りた。
「あ、いた！　青山さん、探したよ！」
　同じ三年の女子が笑顔で駆け寄る。手には紙袋を提げていた。
「どうかした？」
「肝心な物を渡し忘れていた。これ、司会の時に着てね」
「制服でいいのに」
　言いながら受け取ると、その場で紙袋の中を覗いてみる。絢の表情が一瞬で強張った。
「これってトリエンナーレで着た……」
「そう、バニースーツだよ。理事長室に大切に保管されていて、ほら、置手紙もあるし」
　女子は折り畳まれた紙を広げて見せる。
『司会進行役は、やっぱりコレよね』
　その軽い内容に絢は長い溜息を吐いた。
「じゃあ、あとはよろしく」
　女子は忙しなく講堂を出ていった。
　残された絢は再度、紙袋の中身に目を落とす。
「……結局、こうなるのね」
　弱々しい笑みを浮かべるのだった。