ハッピーバースデー！　４月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　４月☆

☆４日　誕生祝いのスペシャルゲスト

　大学生でモデルの城山水樹は、２２歳の誕生日を迎えた。
　東京と寝子島を往復の日々で、この頃はモデル仲間の家に泊まらせてもらうことも増えた。

　先月のホワイトデーは彼氏のヒューの誕生日だった。
　忙しい二人だがスケジュールの合間を縫って、甘く情熱的に愛し合った
　ヒューとは３月末の週末も、同業者の中で一番親しい檜原友美とその彼氏と共に、ダブルデートという形で時を過ごした。
　けれどいま、ヒューはフォトグラファーの仕事が多忙で、しばらくは会えないと言う。

（去年の私の誕生日も、ヒューは海外へ撮影に行っていたっけ）
　傍にヒューがいればどんなに良かったろう、と思う。
（今年もやっぱり会えないのね）
　残念だけど仕方ない。水樹は寂しい気持ちを頭から追いやって気持ちを切り替える。
　今日は友美や他のモデルたちが誕生日を祝ってくれる。
　場所は友美のマンションなので、時間を気にすることもない。
「お誕生日おめでとう、水樹！」
「ありがとう！」
　脂っこい料理も、カロリー高そうなクリームたっぷりの甘いケーキも今日は解禁。
　普段は心身のベストコンディションを維持するため自らを厳しく律しているけれど、年に１度くらいはこうして羽目を外す機会がないとストレスがたまってしまう。
　
「これ、この前のＷデートの写真」
　水樹がＷデートの際に撮った寝子島イリュージョンランドでの写真を見せると。
「キャー、イケメンじゃない！　いいな～」
「ほんと、モデルか俳優でも通用するんじゃない？」
　モデル友達が嫉妬交じりで羨ましそうにキャーキャー騒ぎ、それで色々と恋バナをしてさらに盛り上がった。

　気づけば日付が変わっていて。
（もうこんな時間……今日はそろそろお開きかな）
　と水樹が思っていると。
「そうそう、スペシャルゲストが来てるよー」
　友美がそう言ってドアを開けた……

　
　ヒュー・ヒューバートは、先週の週末に水樹とその友人のカップルでＷデートして、その翌日にはもうフォトグラファーとしての仕事に追われていた。
（先月誕生日に水樹にもらった高性能な腕時計、すごく役に立っている）
　それだけに水樹へのプレゼントは何がいいか、かなり迷った。
　何しろ水樹はいまや売れっ子モデル。
（彼女の場合、普段着はラフなものが好きみたいだけど、それが自然に似合うんだよな）
　だからこそ下手なものはプレゼントできない。
　ブランドものならいいと言うわけではない。センスが問われてしまう。
　色々迷った末、アドバイスをもらうことにした。
　水樹の友達で先週のダブルデートで一緒になった友美に相談したのだ。
　どんなものを贈ればいいのかメールで尋ねると、さすがに水樹の同業者。
　水樹が好みそうなアクセサリーをいくつか選んでくれた。
「ありがとう。プレゼントとして彼女の家に送るよ」
　だが友美に訊かれた。
『日付が変わるころに時間取れる？』
「うん」

　当日、昼過ぎに友美のマンションに案内されたヒューは、誕生祝をする部屋の隣室で待機していた。
　結構長く待たされる羽目になったが、どんなふうに渡すか色々考えているうちにその時が来た。

「え……ヒュー？！」
　招き入れられたヒューの姿を見て、水樹が口を押える。
「サプライズプレゼントはお気に召した？」
　イタズラっぽく友美が尋ねるが、水樹とヒューはもうお互いしか見ていなかった。
「二人の部屋は用意してあるわ、ごゆっくり」
　友美に感謝しつつ、二人きりの部屋へと雪崩れ込んだ。
「ハッピーバースディ、水樹」
「ヒュー……ありがとう！」
　渡されたプレゼントを手に、水樹の瞳が潤む。
　会えないと思っていたから、喜びもひとしおで。
　水樹は満ち足りた思いでヒューの胸に飛び込んでいくのだった。

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