おにぎりを日常に添えて｜リアクション

おにぎりを日常に添えて

●家庭科同好会

　４月半ばのある日。
　水上桜は家庭科同好会に顔を出していた。同好会に顔を出すには４月になってから２回目だ。

　そもそも彼女は多忙な身である。
　その大人しげな外見とは裏腹に、水泳部と家庭科同好会を掛け持ちしている。そして生徒会会計まで務めるのだから、かなりアクティブだ。しかし今日は水泳部も生徒会もなかったので、家庭科室に足を運んだ。　　

（前回来たときはアクセサリーを作ったけど、今日は何をするのかな……）

　そう思いながら扉を開けると、同好会の面々が声を掛けてきた。どうやら今回はおにぎりをつくるらしい。もう準備はできていて、白米とさまざまな具材、そしてのりが調理台に置かれている。桜も手を洗って準備をすると、その輪に入った。

「おにぎりっていろんな形があるよね」

　各々が自由に具材を選んで、好きなように握っている。
　彼女が作れるのは俵結びと丸型で、三角形は型押ししないと作れない。

（まずは梅とおかかを和えて……）

　ねり梅に程ほどのおかかを加えて混ぜる。
　手のひらに乗せた白米の中央にそれを乗せて、包むように白米を丸める。そして指で平らに抑えるようにしながら回転させて、俵型に整える。器用にいくつか作り終えると、それを皿に乗せる。

（綺麗にできたけど、ちょっと寂しい）

　桜は少し考えて、ふりかけや海苔でデコレーションしてみる。ふりかけの色が加わるだけで、ずいぶん雰囲気が変わる。のりもただ巻くだけではなく、細長く切って模様にするなど工夫を凝らす。
　また、調理道具のなかにはおにぎりの型がいくつかあった。三角や俵だけではなく、星型やハート型、動物の顔の型もある。せっかくの機会なので、星型で作ったおにぎりに黄色のふりかけをまぶしたり、動物の顔を作って、海苔でパンダにしてみたり。

　他の皆もそれぞれの思うおにぎりを作っている。
　炊いた白米はすべておにぎりに変わり、海苔や具材も全部使い切った。そして目の前には大量のおにぎりが並んでいる。

　おにぎりなどを大勢で作ると、楽しいのも相まってたくさん作りすぎてしまい、それをどうしようかという展開になりがち。今回も例にもれず、人数に対してかなりの数のおにぎりがある。
　でも家庭科同好会はおしゃべりな女子が多い。いざ実食となると、おにぎりの感想や学校が始まってからの出来事など、話題がつきない。そうなるとお腹も空いてきて、１つまた１つと皿からおにぎりが無くなっていく。
　そうして気づけば、あれほどあったおにぎりは１つも残っていない。

（食べすぎたかな）

　話すことに夢中でどのくらい食べたかはっきりと覚えていない。ただお腹の具合から、結構な数を食べたような気がする。けれども楽しかったので、桜は満足だった。　

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