《灰色猫テオの事件簿》誰がおにぎりを殺したか｜リアクション

《灰色猫テオの事件簿》誰がおにぎりを殺したか

●エピローグ

「みんなすごい。だけど……動機は？　どうしてウォルター先生はおにぎりを殺したんだろう？」

　英二が残った疑問を口にする。
　犯人がウォルターだとほとんどの探偵が気づいていた。
　しかし動機については首を傾げている者も少なくない。
　そんな中、ぽつりと流が言った。
「動機はおにぎりにサンマをいれたのが許せなかったってとこかな？」
「どういうこと？」
　英二の問いに夏夜が答える。
「憶えてる？　３人の先生がおにぎりの好みを言った時、五十嵐先生とフジコ先生は『おにぎりに白以外が混ざっていても問題ない』のに対し、ウォルター先生だけは『おにぎりに白以外が混ざっているのを好まない』人だった」
「ええ、たしかにこう言っていたわね――『おにぎりは白米のみの塩握りに限ると僕は思うけどねえ』って」
　ブリジットはウォルターを横目で見た。
「事実、貴方は、ののこから勧められたおにぎりを断っている。
　そのおにぎりには、焼きサンマが具材として使われていたからね。
　真っ白な白米のおにぎりが焼きサンマを具材にされて穢されたことが、貴方には許せなかった。
　でも、凶器にチョークを使うとすぐに自分の犯行だとバレてしまう。
　だから生サンマを盗み、それを凶器に使った」
「やれやれ……そこまで言い当てられちゃ、僕の負けだなぁ」
　ウォルターは小さく肩を竦める。
「その通りさ。白くないなんて許せなかったんだよ。――僕にとっては重要なことだったんだ」

　

　こうして『殺おにぎり事件』は解決した。

「難しい事件だったわ……」
　美野梨が深く息を吐く。
「ちなみにだけど、もし僕がおにぎりを殺すつもりならサンマを投げるより発泡スチロールの箱に敷き詰められている氷をこっそり取って投げるけどね。そのまま噴水の中に氷が落ちれば溶けて証拠は消えてなくなる」
　サキリが言うと、流が横目で見てにやりと笑った。
「君が犯人じゃなくて良かったよ」
「そうだったとしてもこの名探偵ブリジットが華麗に謎を解いて差し上げたわ！」
　学も笑いながら、解決後の様子をビデオに映している。

　時子は五十嵐の傍に寄り添っている。
「解決して良かったです。先生は関りがないと信じていました……」
「ご心配をおかけしましたね」
「大丈夫です。……ところで、まだおにぎりしか食べていないのでしたら、お弁当もどうですか？　今日も作ってきていますので」
「いつもすみません、いただきます」

　英二とののこは、ルイセにサンマをご馳走してやった。
「脂がすごいですね。サンマがはずみで谷間に落ちて挟まったりしたらセクハラ事案発生です」
「ごめん、何言ってるかよくわかんないや」
　英二は申し訳なさそうに頭を掻く。
「だけどルイセちゃん、なんか楽しいから友だちになろ！」
　ののこは彼女が気に入ったようだ。

　そして俺は濡れ衣が晴れたことに安堵して、大きく伸びをしてくつろいでいた。
「本当に君もとばっちりだね……次はちゃんとお魚をねだってみるといいよ」
　夏夜に抱き上げられたがくすぐったくて、腕からするりと飛び降りる。
　月がくるくる日傘を回しながら手招きしていた。
「ご飯ご馳走してあげる。だから今度は盗み食いしちゃ駄目だよ？」
　
　さあて、どうするかな。
　俺は、なあ……ん、と曖昧に鳴いてみせる。
　正直言って、約束は出来かねる。
　だって俺は猫だからな。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

※このシナリオはフィクションです。
　実在の寝子島高校やＮＰＣと直接の関係はありません。

ご参加ありがとうございます。笈地です。

予定よりお届けするまで時間がかかってしまってすみません！！

今回、おにぎりでミステリーというオーダーを頂きまして
コメディ風なんだけど、
本格っぽい謎解きが出来るシナリオにしたいなと
意図しながら構成させていただきました。

解いてもらえてホッとしています。

やってみて正直な感想。

【……ミステリ作家さん凄すぎる……】

ＮＰＣの台詞の細かい言い回しとか、情報を出す順番とか
何回も書き直してしまいました。
らっかみ！のリアクションでここまで直したのはじめてでした笑

ミステリとしてはまだまだな部分もあったかと思いますが
お楽しみいただけましたら嬉しいです。
もっと上手に書けるようになりたい！

それではまた次のシナリオでお会いしましょう。笈地でした。

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