うごきだす春、部活動＆同好会｜リアクション

うごきだす春、部活動＆同好会

●探検部は予算が足りない

　邪衣士は、引き継いだ探検部の備品整理と購入のために買い物へ出かけた。
　メインの活動の裏にある地味な事務作業は、猫鳴館の自治会長時代から得意とするところだ。
　ちなみに買い物リストは以下の通り。

『貸し出し用のトレッキングシューズ数足』
『ロープ』
『新しいテント』
『トレッキング用杖数本』
『新しいカラビナ数十個』
『最新の猫島の地図』
『ここ1年間のアウトドアに関する情報誌や釣り情報誌のバックナンバー』
『釣り竿数本』
『部活統一のトレッキングコート　ベスト部員の人数分』

　かなりの数だ。しかもけっこう予算がかかるものばかり。
「部費足りるかな？」
　独り言のつもりだったが、なぜか女性の声で返事が返って来た。
「無理そうです！」
「うわっ！　えーと……どなたですか？」
「アイ活研顧問、雛鶴さゆりです。いろいろな部活を見学中です！」
　人見知りなのか真っ赤になってもじもじするさゆり先生に、士は胡乱げな顔を向ける。
「そうですか……じゃ、俺はこれで」
「ま、待ってください！　新米顧問として探検部さんがどう経費削減するのか知りたいんです！」
　そこまで言われては……。
　新人教師のキラキラした瞳を見ると、お人好しの血が騒ぐ。
「ええと、できる限り予算を抑えておきたいところなんで……」
　釣り竿はいっそ材料を買って自作にするか？
　自作で作ったものを使う方が探検っぽいか？
　地図や情報誌のバックナンバーは図書館でコピーをもらえれば経費削減になるか？
　そんな考えを口にしていく。
「ふむふむ！」
　さゆり先生は興味津々と言った様子だ。
　ほかのものはどうだろう？
「貸し出し用の靴は買いたいんですよね。去年までは各自で用意してもらっていましたが流石に負担してもらうのは気が引けまして……貧乏学生も多いもので。それとテント。さすがにそろそろ新調したい」
　話し終えてみると優先順位が決まっていた。さゆり先生がちょうどいい話し相手になったようだ。
　靴。それからテント。ここはマスト。
「あとは予算が足りないときは学校側にお願いするしかないな」
　荷物持ちを申し出てくれたさゆり先生にも手伝ってもらい、買い物をして学校に戻ってくる。
「ここまで準備して部員が増えなかったら悲しいが……まぁ前向きに考えよう！　先輩から引き継いだ部活だ、より活発な部にして見せるさ！」
　ふと見ると、部室棟の前で手を振っている女生徒がいた。
　入学式の日に知り合った花咲夢乃だ。もう一人いる。夢乃は一人では他の部の見学に行きづらいというクラスメイトに声を掛け、一緒に探検部を見学に行こうとしていたらしい。
「代わりというわけではないですが、うちの部も見て行ってください。さゆり先生からもほら！」
「アイドル活動研究部です！　私が顧問なんです！」
「アイドル？　そうか、じゃあ荷物を部室に置いたら寄ってみるよ」
　そう安請け合いしたものの……。
　
　今日もまた道に迷って、アイ活研までたどり着けない士であった――。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます！　
部活は歴史部だった笈地です。（しかし歴史は詳しくありません）
年に一度、部員でどこかに旅行に行くのがほぼ唯一の活動という部でした。

今回はアクションのお陰で、
さゆり先生があちこちに顔を出しております。

各部には、いわゆるモブな新入生さんたちも入部したりしております。

高校生活、これからもなおいっそう楽しんでいただけたら嬉しいです！

それではまた、寝子島でお会いしましょう。笈地でした。

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