扉を開ければボスバトル！｜リアクション

扉を開ければボスバトル！

　渥美ニナは突然目の前に現れた大きな扉を見て首を傾げた。
「なんだかこう、こんな状況を用意されたら、開けるしかないですね」
　ニナは苦笑を浮かべ、扉に手をおいた。蝶番がきしむ音がして、ゆっくりと重い扉が開いた。
「ん？」
　薄暗い空間だった。大きな声を出せば響きそうだ。かなり広い。等間隔に並んだ太い柱が建っている。何やら靄がかかっているように見える。
　ニナは辺りを見回しながら部屋へと足を踏み入れた。
「！」
　ヒュンと風を切る音、目の前から何かが飛んでくる。ニナは横へ飛んで、回避。後ろの壁に鉄パイプらしき棒が激突して落下した。ニナはすぐに柱の陰に隠れた。すると、鉄パイプが無差別に飛んでくる。
（これはこちらのことは見えてないですね）
　と、足に何かがまとわりついたような。足元をみると、
「なるほど、これで大体の位置を把握してますね」
　糸に触れたことで、鉄パイプが飛んでくる位置がニナの隠れている柱に集中する。
（軌道は正確ですね）
　ニナは近くの糸を手に取った。それと同時に駆け出す。途端に攻撃がニナに向かう。
「伝わるまで時間がかかる……ってことですね」
　全速力で走ればまず当たらない。見えていない分、一瞬遅れるのだ。
　手に持った糸を駆け抜けながら柱につける。次に別の糸を持ってから先ほどの糸を思い浮かべる。
「かちゃり」
　呟く。糸が外れたのだろう、攻撃が先ほどの柱に向いたようだ。
　引っかかってくれたらしい。
　ニナはにやりと笑った。
　ペースを落としながらも糸を壁や床にランダムに貼り付けて行く。
「かちゃり」
　さすがに五六か所で反応があると、戸惑いがついのだろう。
　ニナは糸をまとめて五本、近くの柱にくっつけた。離れながら、呟く。
「かちゃり」
　すると柱に集中砲火が始まった。
「今しかない」
　空間を一周し、落ちていた瓦礫を拾い上げ、攻撃に特化した鈍器を作り上げる。柱と糸を繋ぎ、鈍器を持って自分の体をパチンコ玉のようにセットする。
「一撃で決めますよ」
　糸ごと後ろに下がって糸を引っ張り、床を蹴って体重を糸にかける。パチンコ玉のように自分の体が弾き出される。
「かちゃり」
　糸から離れた。
飛ばされながら鈍器を振り上げ、
「はああっ！」
　目隠し男の顔面に鈍器が直撃したのだった。その瞬間、目隠し男と幻覚が消え去った。

　気付けばそこは寝子島のどこかの通りであり、いつもの風景が広がっていた。はっとして振り返ると、例の扉がゆっくりと消えていくところだった。
「！」
　今回、大分酷い目にあった。このまま逃がすと、また被害者が出るかもしれない。
「逃がさないっ」
　ニナはとっさに蹴りを繰り出した。すると、手ごたえがあり、扉にひびが入る。しかし、粉々になる前に消えてしまった。移動先で壊れてくれていればいいのだが。

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