Escape！｜リアクション

Escape！

寝子高校付近へ無事到着したミドリ達は校内への侵入を窺っていた。
二人がいる道も人通りは少ないが、人が通らない訳ではない。
（かなり怪しいわよね）

どうやって校内に入ろうかと考えていた時、一人の女性徒が高校の方向へ歩いて行く。
「あの子に協力を依頼しましょう！」
「え！ちょっと！ミドリ？！」

蛇那伊の制止を振り切ってミドリは女性徒に駆け寄る。
「こんにちは！あなた、寝子高の生徒？私の力になってくれない？」
いきなりウェディングドレスの女性に話を掛けられた、女性徒は固まってぽかんとしてる。
だが、ミドリはそれを無視して事情を説明し始めてしまった。

「ってことで、着替えを貸してもらえないかな？」
「え？あの、ちょっと意味が」

ミドリの横暴な要求を受けた女性徒、椎井莉鳥は状況が掴めずに困惑していた。
それを見かねた蛇那伊が呆れた様子で「アタシが説明するわ」とミドリの代わりに事の詳細を莉鳥に話していく。

蛇那伊からの説明を静かに聞いた後で、莉鳥がミドリに尋ねる。

「要するにミドリさんは、一方的な婚約が嫌で逃げてるってことですよね？」
「そうなの！」
「で、着替えたいってことですか？」
「そう！莉鳥のその制服貸してくれない？」
ミドリは莉鳥が着ている制服を指差した。

「良いですけど。―――でもここじゃ着替えられないですよ」
「そうね。流石に道の往来で女性が着替えるのは避けたいわ」
「……。……あ、良い所知ってるかもしれない」

莉鳥の後に付いて、ミドリ達は寝子高の体育倉庫へやって来た。生徒は数人いたが、寝子高に通っている蛇那伊と莉鳥のおかげで三人は見つからなかった。
外の見張りを蛇那伊に頼み、二人は早速着替え始める。

「やっと脱げるわね」
「……。ミドリさんに制服を貸したら私はなにを……」
「ん？このドレス貸すわよ？」
「え？ウェディングドレスを着ろって？」
「うん。でもこれを着たら私だと思われて狙われるから気を付けてね！」
ミドリは少々苦労しながら脱いだドレスを莉鳥に押し付てくる。
「私に殺し屋相手に逃げ回れってこと？！」
（この人、本当にどういうつもりなの……）

「本当にごめんね。巻き込んで」
ミドリは莉鳥が脱いだ制服を着て、申し訳なさそうに言った。
そんなミドリを見て、困っている人をほっておけない心優しい莉鳥は、囮役を引き受けることしたのだった。
「陸上部員だから頑張ってみます」

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