みんな、VMewberだよ！｜リアクション

みんな、VMewberだよ！

クラフト×セバスちゃん！

「こういうのはうちのメイド（妹）の領分だと思うのだがね」
　旅鴉月詠はやれやれと純白の髪を掻き上げる。星ヶ丘寮の自室で雇っている姉妹のメイドの妹の方は配信主として名を馳せていて、そこにときどき飛び入り参加しているので、こういったことに抵抗はない。口唇は楽し気に弓のかたち。やる気だ。
　モニターの中には、おひげの素敵なナイスミドルな英国風中年執事。
　片手をひらり、胸の前に当てて華麗に一礼すると月詠は視聴者の皆々様へと挨拶をした。
「メイド妹の不定期配信見てるなら何度か声は聞いてると思う。ええ、ハンドメイドサークル『ウィッチクラフト』の主です。セバスちゃんとでも呼ぶといい」
　口調は男っぽいが声は少女のまま。ギャップは大事、というのが月詠の信条である。

　月詠が選択したのは、クラフト系のゲーム配信であった。素材を採取・加工したり、農業をしたり、建物を作ったり、ダンジョンを探索したりという自由度の高いゲームである。
「はい、それじゃあ今日もクラフトやってこうかー」
　まるで古参のような語りっぷり。
　飛んでくる質問には、個人情報以外は丁寧に受け答えする。

「天空におわす神をちょっと捕まえに」

「増えすぎて溢れた牛さん大砲に乗って射出」

「人がドロップした卵。略してにんたま」

「私もたまにエクストリームチェアリングしてます」

「起き攻めとかきいてないですわよーこちとら乙女（おっさん）一人ですことよ」

「ベルトコンベアで移動してた畑、投下！　想定していた動きはそうじゃない！」

「ドラゴンもリスポンから出荷されて鍋に入る時代」

　ええ、すんません。
　自由過ぎて筆者も何言ってるか分からないレベルですが、世界的ブームの火付け役となった鉄板クラフトゲームではなく、現在鋭意開発中の自由度高すぎ大型オープンワールドサンドボックスゲームをイメージしていただければ有難い。セバスちゃんが言っていることが分かる猛者の方はにんまりしていただけましたら！
　とはいえ、猛者には猛者の世界がある！
　知ったかの人々があれこれ専門用語？でノって来てくれて、それに対するセバスちゃんの回答がまたユーモアたっぷりなので、例のクラフトゲームにクローズドアルファ版から参加しているコアなユーザーにとっては超絶面白い実況が繰り広げられている。ついには開発者から『その遊び方は想定していなかった！』と驚きのコメントまで付いて、くだんのクラフトゲームの名前とともに『#セバスちゃん』がネコッターのトレンド入り。このゲームを知らない人も分からないなりに視聴をはじめ、気づけば１０万視聴者を稼ぎだしていた。
　
　目を開けると月詠は自室のバルコニーで夕日を眺めつつ、ゆったりとエクストリームチェアリングしていた。というかエクストリームチェアリングってほんとのところ何！？　調べたけどおにいさんが大自然の中ゆったり座ってる写真しか出て来なくてよくわかんなかったよ！
「ふむ、まあこんなものかね」
　

このページにイラストを設定する