猫鳴館へいらっしゃい！｜リアクション

猫鳴館へいらっしゃい！

☆見学

「お疲れさま。見学してもいいっていう子を連れてきたわ」
　ビラ配りを続ける加代とまうのところに、美野梨は男子生徒を一人連れてきた。
　校門から出てくる子はもういなくなった。
　興味を持って残ってくれた女子とその友達と、合わせると3名。
「猫鳴館への道を案内する……」
　まうが案内役を買って出る。

「びょうめいかん、ってすごく古いって聞いたんですけど？」
「寝子高の歴史……の中で、校舎と同じかその次位に一番古い……と思う。けど、まずは見てみて」
　あちこちきょろきょろしながらにぎやかにおしゃべりをして歩く新入生たちの歩くペースに合わせながら、まうは言葉少なに説明を挟む。
　美野梨と加代もその後をついて行った。

「着いた。どうぞ」
「……え、ここですか？」
　予想以上のボロさに顔を見合わせる新入生たち。
「おっす！　猫鳴館へようこそ！　ゆっくり見てってくれよな」
　簾が明るく新入生を迎えた。
　おっかなびっくり足を踏み入れた新一年生を連れてきしむ廊下を進み、まずは食堂という名の大部屋へ案内する。
「古くて不便なとこもあるけど、代わりのものがあったりするから、結構悪くないぜ。例えば……風呂の代わりに温泉があるとかな？」
　お茶やお菓子をふるまいながら、簾はニヤリと笑う。
「え、温泉があるんですか？」
　新入生は狙い通り興味を示してくれた。
「後で案内するよ。先に軽く自治会や自治会費の事を説明しておくな」　
　説明をし、お茶やお菓子を食べて場が和んだところで、簾は立ち上がった。
「それじゃ、個室を見てもらおうか。公開ＯＫのとこだけだけどな」
　補修しているとはいえひどい部屋もあるので、公開許可のないところは見せないよう気を配る。
　
　簾は自分の四畳半の部屋を案内する。
　部屋には机と、本棚代わりのカラーボックスと、工具棚があった。
　工具棚には工具箱や、重機のミニカーが並んでいる。
「片付いてますね」
「頑張って片付けたからな。布団敷いたらいっぱいになっちゃうけどな」
　美野梨も自分の部屋を公開した。
　生物や科学に関するいろんな紙が壁一面に貼られ、本の量も多い。
「なんかすごいですね……」
「それじゃ、菜園と鶏舎を見に行きましょうか」　
　じっくり見られるのが恥ずかしかったのか、美野梨はちょっとせかすように新入生たちに声をかけた。

　そのまま美野梨は、裏庭に新入生たちを案内する。
「菜園ではみんなで食べる野菜を作っているの。それから、ここが鶏舎よ。卵が取れるわ」
　一羽ずつ紹介する美野梨。
「自給自足なんですか」
　新入生たちは珍しそうに菜園や鶏舎を見て回った。

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