ネコジマ不動産のワケ有り物件｜リアクション

ネコジマ不動産のワケ有り物件

　すまほ不思議、温室の植物もきれい、とご機嫌なユニを連れて最後に向かうはシーサイドタウン。
「何が一番美味しかった？」
「いちご！」
　あと生クリーム、と笑うユニの声が賑やかだったか、古い家屋の門扉を潜って出て来ていた和装の男がちらりと笑った。
(ここも人が住むようになったな)
　しばらく前までは荒れ放題だった元廃屋が今はきちんと整えられているのを見、千早は男に向けてぺこりと頭を下げる。やはり家は誰かが住んでこそ、なのだろう。
　そこからほど近い場所に、最後に内見を予定している物件はあった。
　元家具工場なんです、と先に待っていた不動産屋の言葉の通り、二階建ての建物はやたらに広く、加えてやたらに古かった。
「元々は土蔵だったらしくて、つくりはとても丈夫ですよ。あちこち改修もされています」
　ただ、と言葉を濁し、担当さんは扉と階段箪笥を経た一階部分を示す。
　古い家具の物置状態になった一階には、家具職人だった家主に置き去りにされたさまざまの道具やものが乱雑に転がっている。好きに使ってくれて構わないそうですが、と困惑した表情の担当さんの脇を、ユニがぱたぱたと駆け抜けた。
「なんか一階で声がする！　見てくる！」
「気を付けて」
　また幽霊騒ぎかと顔を強張らせる担当さんに構わず階下に向かうユニを見送り、千早は意外と住みやすそうな二階部分を見て回る。広さは充分、土蔵であるなら防音も備えていそうだ。
　階下で何を見たのやら、くすくす笑いながら戻ってきたユニは、千早の顔を見てちらりと首を傾げた。
「ここにする？」
　一番気に入ったことを見抜かれ、千早は瞳を和ませる。
「そういえば何の声だった？」
　ユニの耳に唇を寄せてそっと問えば、
「ええと、家具の妖精さん。わしら陽気なツクモガミー、て輪になって踊ってた」
　そんな答えが返ってきた。ユニの様子から鑑みても悪いものではなさそうだ。ならば、不動産屋の担当さんに伝える言葉は決まっている。
「ここでお願いしたいです」

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あとがき

担当マスター：阿瀬春
ファンレターはマスターページから！

お待たせいたしました。
春の物件巡りの一幕、お届けにあがりました！
いろんなおうち、ぎゅぎゅっと詰め込んでお届けします。
物件の色々、お任せくださいましてありがとうございました。とても楽しく書かせていただきました。
ユニをお供にしてくださいましたことも、ありがとうございます。とても楽しんだようです。
新居での生活が、神代さんにとって楽しいものでありますように願っております。

それからそれから、卒業おめでとうございます、神代さん！
大学生活も、どうぞお楽しみください！

ご依頼くださいまして、お読みくださいまして、ありがとうございました。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
またいつか、お会いできますことを願っております。

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