布袋猫の感情変化な贈り物｜リアクション

布袋猫の感情変化な贈り物

●不思議な気分に

　そろそろ春も近いので、そこそこ暖かくなってきた。
　それに身体の調子もいい感じなので、佐藤瀬莉は、ちょっとばかりぶらついてみることに。
　星ヶ丘から寝子電でシーサイドタウンまで行き、そこで降りると、なんとなく向かった先はシーサイドアウトレット。
　アウトレットの中に時計屋があったのを思い出したので、そこへ立ち寄ってみようかな、なんて思っていたら頭にコツンと何かが当たった。
「何かな？」
　足元に落ちていたものを見ると、それは板チョコだった。板チョコを手に取ると、なぜかイライラ、ムカムカしてきた。
「何だかわからないけど、すっごくイラッとムカッときた」
　八つ当たり、と言わんとばかりに思わずその板チョコにかぶりついた。
　バリバリとヤケ食いと言わんばかりに食べ終えると同時に、なぜか気分がすっきりした。
　何でだろうと不思議に思ったが、じっくり考える暇もなく次のお菓子が落ちてきた。
　板チョコの他には、イチゴ大福だったり、お饅頭だったりといろいろな和菓子が瀬莉の足元に落ちていた。
　イチゴ大福を拾うと、今度はなぜか板チョコのイライラムカムカとは正反対に気分が朗らかになってきて、底抜けに明るくなってきた。
「なんかイェーイとかチャラい気分になってきた」
　その場で踊り出したくなったほどに。
　イチゴ大福を食べたらどうなるんだろうと試しに食べたら、イェーイな気分が消え去った。
「どうなってるの？」
　さすがにこれは……と不審に思う。
　アウトレット近く、ということで思い当たることが、ひとつだけある。
（もしかすると布袋猫？　だとすると、また何かやらかしたのかも）
　布袋猫探しに関わっていたこともあり、これは布袋猫がやったことかもしれない。
「悪い子にはメッ！　しないと」
　そうと決めたら、布袋猫のお社に行くのみ。

　お社に向かう瀬莉とすれ違った白石龍樹は、母親へのホワイトデーのプレゼントを買いにアウトレットへ。
「あ、お菓子が落ちてる！」
　靴にコツンと当たったものを見ると、それはキャンディーだった。
「お菓子ゲット！　いっただっきまーす♪」
　ぶどう味か、と口の中に含んでいるキャンディーを味わう。
　その途端、何だか変な感じになってきた。
（あれ……？　熱い視線を感じるみたいな……）
　近くにいる美人のお姉さんの大きな胸を見たからだろうか。
　それとも、可愛い女の子が龍樹を見てニコッと微笑んだからだろうか。
　女の子からお姉さん、奥様といった様々な年齢の女性からの視線が妙に熱い……。
（な、なんだ？　オレって人気者？　スカウトされちゃうかな？）
　そうなったら、すっごく人気者になるなオレ！　と照れた。
　最初は口の中で転がすように舐めていたが、小さくなると噛み砕いた。
「あー、うまかった！」
　キャンディーを食べ終わっても、龍樹の熱い視線を感じる気分は変わらず。
　どうやら、お菓子の効果には個人差があるようだ。

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