【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

「四字熟語のラップを歌うわ」
　三宅葉月が受け取ったマイクを使って言った。
　場は静まり、目は舞台に釘付けとなった。清楚な見た目と発言の内容が噛み合っていない。反応に困った末の沈黙だった。
　葉月は卒業証書を腋に挟むと体全体でリズムを取り始める。
「世は魑魅魍魎、yeah、余は因果応報、woo」
　囁くように歌い、同じフレーズを繰り返す。そしてマイクを生徒達に向けた。
「魑魅魍魎？　で、因果応報？」
「come on!」
　徐々に生徒達の声が揃ってきた。葉月は声に乗って身体を動かす。
「Everyone's coolest!　即興曲、卒業」
　マイクを持った手を斜め前に掲げる。ゆっくりと口に引き寄せて、瞬間、前屈みとなった。
「森羅万象、春夏秋冬、孤軍奮闘、悪戦苦闘、一喜一憂、呉越同舟、一蓮托生、心地光明」
　四字熟語を矢継ぎ早に口から放つ。最後にターンを決めた。横向きの姿で腋に挟んでいた物を全員に見えるように突き出す。
「卒業証書！」
　決め台詞の直後、動きを止めた。
　呆気に取られていた観客は一人を皮切りに万雷の拍手を送った。その中、葉月は静々と階段を下りていった。