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早死にするのは善人だけ
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テーブルにふたつのコーヒーカップが置かれた。
修のカップは普通サイズ、芽衣子のものはエスプレッソのデミタスカップだ。カップの色はそろって、しっとりとしたつやのあるピアノブラックだった。
ジャズ喫茶というのだろう。防音ドアを開けたとたん密度の高い音圧に体が包まれた。かといって音楽は決してうるさくない。トランペットにテナーサックス、ウッドベースの響きは混然となって耳から体内に流れ込み、たちまち血液と同化したように修には感じられた。
「仕事の帰りにときどき来るんだ、ここ」
「おひとりで?」
「ほらまた、新聞部さんがさりげなくかまをかけにきた」
いたずらっぽく芽衣子は笑った。この人のこういうところは本当にチャーミングだと思う。
はははと笑って修はカップを手にした。
「冗談ですよ。俺も気に入りました。この店の雰囲気」
いつか誰かと訪れたいものだ。
煉瓦の壁、板張りの床、マホガニーのテーブルに間接照明。琥珀色で統一された店内だ。古いが高級品とわかるオーディオ設備がととのっており、深みのある音質のジャズレコードがターンテーブルに乗っている。
いきなり重い話をするわけにはいかない。
修は雑談からはじめた。主として自分の日常の話題だ。いよいよ二年生も終わり最高学年になること、先輩たちは卒業の時期だということ、そんなところを。
「私のほうは」
芽衣子が口を開きかけたところでレコードが終わった。
店主と思わしき初老の男性が、つとと歩いてレコード盤を裏返す。慎重に針を置く。しばらくのホワイトノイズ、滑るように流れ出す音楽――示し合わせていたわけではないのだが、音楽が再開するまでふたりとも口をきかなかった。
芽衣子にとっての近況、それが脇坂香住の話にたどりつくことは当然の流れだった。
「最近は学校も落ち着いてきたわ。ようやくね」
「つまり……」
芽衣子は、迂遠な言いまわしをしなかった。
「電話がね、ひどいときなんて一日数百件ちかくかかってきてたから。『あんな生徒を出すなんて、この学校の教育方針はどうなっているのか』なんていう非難、『人殺し!』といった罵倒、ちょっと口に出したくないたぐいの罵詈雑言……『生徒の名前と顔写真を公開しろ』といったものも少なくなかったし、取材を装ったイタズラ、無言電話もたくさんあった」
芽衣子は薄笑みを浮かべたが、疲れているようにしか見えなかった。
「こっちも被害者だなんていうつもりはないわ。責任は深く感じている。でも一時期は本当、電話に出ることすら怖かった。毎日毎日こんなだったからね」
血の匂いを嗅いであつまってくる鮫のように、どこからともなく現れこのような行動に走る者が世間には大量にいるのだ。こういった事件があればつきものの騒動だと聞いたことはあるが。
軽快なベースソロが、しばしの沈黙を埋めていった。
「電話をしてきた人たちは、正義を執行しているつもりだったんでしょうか」
それとも単なる暇つぶしかストレス解消か、そのすべてか。
もちろん修もただ口に出しただけで、結論を出すつもりはなかった。
間違いないことはひとつ。
それは今道先生が、学校が、この件でひどく傷ついたということだけだ。
「すみません。嫌なことを思い出させてしまったようで。それで、その後先生は」
「うん」
「その生徒と、会うことはできたのでしょうか?」
拘置所に入れられたとしても期限がある。いつまでも警察にとどめ置かれていることはないはずだ――そんな大意のことを修はつづけた。
そうね、と芽衣子は応じた。
「児童自立支援施設に移ったわ」
センセーショナルな時期が過ぎれば、たいていの報道は別の事件にまなざしを移すものだ。香住のその後について修は知るすべがなかった。
芽衣子はさらに言った。
「面会の申し入れは何度かしてる」
何度か、という表現に込められた意味は言うまでもないだろう。
施設であれば拘置所よりもずっと面会のハードルは下がるはずだ。施設側が拒否しているのではないと思われる。
だとすればつまり、香住自身が拒否しているのだ。
「手紙は送ったのでしょうか」
「申し入れのたびにね」
最初の二回ほどは読みもせず送り返されてきたという。
「でも以降はね、届いてはいるみたい。読まれているかどうかはわからないけど」
「少し、前進ですね」
「ありがとう」
芽衣子の肩の力が抜けたように見えた。
前進、自分で言った言葉ながら修はたしかにそうだと思った。彼女は今、自分を見つめ直す時間が取れる場所にいる。だとしたらきっと、先生からの手紙も読んでいるはずだ。
「さしでがましいかもしれませんが提案です」
どうぞ、と芽衣子は目でうなずいてカップに唇をつける。
「可能でしたら、差し入れなどしてみてはどうでしょうか。本……書籍ならそのままいけそうだし。菓子なら季節イベントをある種のダシに使うとか」
軽く笑って、菓子類は所内で買えば認められることがあるそうですと修は告げた。
「なるほど」
芽衣子の顔に血色がさした。目が明るくなる。声も弾んでいた。
「いいアイデアね。本は特にいいかも」
「それに手紙を添えるんです。きっと本もその生徒に受け取ってもらえると思います」
「試してみるわ、すぐにでも」
すでに芽衣子は腰を浮かせかけている。
「もしかして今から書店へ?」
「ご名答」
外で会ったときとは声がちがった。しぼんだ風船のようだったのに、今ではアルトサックスのように張りがある。財布を取り出そうとする修を制して、
「よしてよ。アドバイスのお礼だから」
と言ったときにはとうに、芽衣子は伝票を手に立ち上がっている。
「ごちそうさまです」
修も立つと、慣れた動作で芽衣子のコートをハンガーからはずして襟を取った。
「ありがと。紳士なのね」
芽衣子はコートに袖を通す。これも慣れた動きだ。
「どういたしまして。ご一緒していいでしょうか。書店まで」
「お願いするわ。良かったら本選びの意見も聞かせて」
「喜んで」
見送りをするかのように、壮麗なトランペットソロが背後に流れていた。
聞いたことのある曲だな。タイトルも奏者もわからないけど。
ふと修は訊いた。
「先生は詳しいんですか、ジャズ?」
「全然。私普段はロックとかヒップホップしか聴かないし」
だからいいのよこの店が、と芽衣子は微笑して歩き出した。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
6人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年11月03日
参加申し込みの期限
2020年11月10日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年11月10日 11時00分
参加キャラクター一覧
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