【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞

☆３日目

　1年生の楡宮遠海の、１学期の期末テストは散々だった。
　灼熱地獄だわなぜかカレーが食べたくなるわと集中できず、繊細な遠海にとって最悪のコンディションだった。
（あの時は暑さのせいで食欲がなかったし、猫舌だから、１日当たりたった５杯しか食べられなかったわ）
　痩せの大食いな遠海は、見た目からは想像できない食欲の持ち主だった。
　３日×５杯でカレーを１５杯は食べたせいもあるのか、頭の中に濃厚なカレーの香りとインド音楽っぽい曲が流れて、なぜかインドっぽい衣装を着て踊っている姿が脳裏に浮かぶわで。
　結局最終日、妄想しているうちに時間が過ぎてしまい理科のテストを、三分の二を白紙で提出してしまった……。
　しっかりしているつもりだった遠海にとって、高校生活の手痛い洗礼であった。
（おかげで追試と補講で貴重な夏休みがつぶれる羽目になったし）
　２学期の時も、エアコンの故障で寒いし食堂でジャンボかき氷を勧められるしで散々だったが、１学期に比べると少なくとも追試や補講を免れただけましかもしれない。
（あの時も５杯しかかき氷を食べられなかったっけ）
　なぜか先輩の野々ののこにライバル意識をもたれ、一方的にかき氷勝負をされていたりもした。

　そして今回の期末試験。
（今回は進級がかかっているので、これまで以上に気合いを入れないと）
　今度こそ妙な事態にならないことを祈りつつ、試験に臨む。
（祈りが通じたのかしら）
　幸い今までのところ、気候も問題ないし食堂のおばちゃんが変なメニューを出したりすることもなく、妙なことは起きていない。

　だが３日目、１時間目は鬼門の理科だ。
　いつもなら不安になるところだが、決戦を前にして、遠海の心は穏やかだった。
「テスト開始」
　中野空也先生の朗朗とした声が教室に響き渡り、試験が始まった。

　寒くも暑くもなく、今回は何事もなく普通に解き終えた。
　遠海は静かに微笑む。彼女は、試験対策として願掛けをしてきたのだ。
（よかった……カツ丼と天丼を５杯ずつ食べたおかげね）
　……それは願掛けと言えるのだろうか？
　ともあれ、脳にも心にも栄養は必要なのだと再認識する遠海だった。
（明日も食べておこうかな）