【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】満点？留年？？早春、四日間の死線＜物語編＞

〇意外な場所での勉強会

　八神修は、昇降口で七夜あおいと雑談していた。
「勉強の調子はどう？」
　聞いた修に。
「うん、なんとか頑張ってる……修君はどこで勉強してるの？」
　あおいが尋ねた。
「俺？　基本自宅だけど、時々は喫茶店や図書館も行くかな。人が多少居るけど気分は変るよ。そうだ」
　修は何か思いついたようだ。
「テスト頑張りたいようなら、一寸変わった勉強場所を紹介しよう」
「えっ、どこ？　図書館でも喫茶店でもないんだよね？」
　あおいは不思議そうだ。
　そんなあおいの表情を十分に堪能してから、修は回答を出した。
「カラオケだよ。テレワーク用の部屋さ。人も居ないし集中出来るよ」
「カラオケ？　何か楽しそうね」
　目を見開くあおいに、修はさりげなく言った。
「行ってみる？」
「うん」

　そんな訳で放課後、修は、あおいを連れてカラオケ店へ入った。
　修は店員に要望を伝える。
「テレワーク用の部屋を使いたいんだが……」
「それでは静かな部屋をご案内しますね」
　指定された部屋は、大きな画面にミラーボールもあり普通のカラオケ用に見えた。
「普通の部屋だよね」
　あおいは首を傾げるが。
「あ、でも確かに静かかも」
　そんなカラオケルームで二人は教科書やノートを広げる。
「修君、ここのところなんだけど……」
「ああ、ここはね……」
　あおいの質問に修は答え、丁寧に教えた。
「ありがとう。よくわかった」
「勉強は俺の得意分野さ。力になれたら嬉しいよ」
　あおいの笑顔に、修は微笑み返す。

　あおいの質問が終わると、修は英語の問題集を開いた。
「今回、五教科満点を目標にしてるんだ」
「えっ、すごいね。さすが修くん」
「高い方が挑みがいあるからね。どの進路でも成績を上げておいて損はないね」
「いつも本当によく頑張ってるね」
　感心するあおいを、修は微笑んで見つめる。
　思い浮かんだ言葉が、そのまま口をついて出た。
「頑張ったら……何かいいことあるかな」
　自分からは、ご褒美が欲しいなんて言い出せないから。
　あおいに言ってもらえるなら嬉しいと修は思う。
　あおいが軽く目を見開いた。
「もしかして、何かご褒美が欲しいの？」
「もらえるなら素直に嬉しいな」　
「ご褒美って、例えば？」
「あおいとスイーツ作りがしたいな」
「それっていつもやってるような……」
「え？　確かに！」
　修は笑った。
　先日もバレンタイン用のチョコを修の家で一緒に作ったばかりだ。
「でもスイーツもいろいろあるし、毎回違う楽しみがあるから、楽しみにしとくよ。あおいの目標と希望のご褒美は？」
「うーん、７０点以上、かな？　ご褒美は……」
　しばらく考えてあおいは言った。
「こんなふうに一緒に楽しく過ごせること、かな」
「……よし、頑張ろう。なんでも協力するよ」　
「え、修君テンション上がってない？」
　修は熱くなる気持ちを、勉強に向けることにした。
　
　かなり集中した時間が過ぎて、あおいの疲れを見て取った修は声をかけた。
「さて、勉強頑張ったしドリンク取って少し歌おうか」
「いいの？」
　あおいが目を輝かせる。
「鋭気も養わなくちゃね」
「やった！　修くん、何歌う？」
「あおいから選んでいいよ」
　あおいの歌を聴けたら、疲れを忘れてしまうだろうと思う修であった。